中国における発酵大豆食品腐乳中のペプチドの機能性
中国における発酵大豆食品である腐乳の抽出物には、高い抗酸化活性とアンジオテンシンI変換酵素阻害活性が認められる。これらは、主に分子量1万以下のペプチドによるもので、腐乳は機能性食品としての利用が有望な食材である。
背景・ねらい
近年、中国国内において、食品の機能性に関する関心が高まっており、加工による機能性の変化の解明、機能性の利用による食品の高付加価値化に関する研究が重要となっている。中国国内には数多くの伝統食品が存在するが、その機能性に関しては解明が進んでいない。そこで、大豆等の蛋白質資源の高度利用技術の開発と伝統食品の高付加価値化の観点、および高血圧症予防等の機能性食品への利用を図ることを目的として、発酵大豆食品である腐乳からの抽出物の抗酸化活性(DPPHラジカル消去能)、アンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害活性を評価する。
成果の内容・特徴
- 腐乳と沖縄で生産された“豆腐よう”からの水溶性抽出物の抗酸化活性(図1)、ACE阻害活性(図2)を比較すると、活性は製品によって値に差があるものの、腐乳の活性は豆腐ようと同等またはそれ以上の高い活性を示す。
- 異なる試料の抗酸化活性とACE阻害活性を比較すると、高い抗酸化活性を示す試料ほど高いACE阻害活性を示す傾向が認められる。
- SDS-電気泳動の結果から、抽出物は主に分子量1万以下のペプチドからなることが示され(図3)、発酵による低分子のペプチドの生成が多い試料ほど抗酸化活性とACE阻害活性が高い傾向が認められる。
成果の活用面・留意点
腐乳のACE阻害活性は豆腐ようと同等以上であることが明らかとなり、腐乳のペプチドも精製によって高活性の製品にすることができる。ACE阻害活性の高い腐乳は高血圧症予防効果が期待でき、これを活用した食品や飲料の開発が可能である。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 食料利用部
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中国農業大学日中食品研究中心
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際プロ〔中国食料資源〕
- 研究課題
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澱粉・動植物蛋白質を主成分とする食品素材化技術の開発:動植物蛋白質の加工条件と加工特性
- 研究期間
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2002年度(2001~2003年度)
- 研究担当者
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斎藤 昌義 ( 食料利用部 )
辰巳 英三 ( 食料利用部 )
汪 立君 ( 中国農業大学日中食品研究中心 )
李 再貴 ( 中国農業大学日中食品研究中心 )
李 里特 ( 中国農業大学 )
- ほか
- 発表論文等
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斎藤昌義 (2002): 大豆の機能性.中国食物と栄養, 37号, 30-31.
李再貴, 斎藤昌義, 辰巳英三, 汪立君, 林徹 (2003): 中国における伝統食品産業の現状と問題点. ニューフードインダストリー, 45(1), 65-69.
Wang, L., Saito, M., Tatsumi, E. and Li, L. (2003): Antioxidative and angiotensin I-converting enzyme inhibitory activity of sufu (fermented tofu) extracts. JARQ, 37(2), 129-132.
- 日本語PDF
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