Pick Up

1574. 強まるエルニーニョと食料・農業リスク―気候予測を現場の備えと行動につなぐ

関連プログラム
情報・戦略 情報

 

1574. 強まるエルニーニョと食料・農業リスク―気候予測を現場の備えと行動につなぐ


コペルニクス気候変動サービス(C3S)は、2026年9月の世界平均気温が産業革命前(1850~1900年)の推定平均値を1.63℃上回り、同サービスの再解析データ「ERA5」で、9月として過去2番目に高かったと報告しています。また、南緯60度から北緯60度までの海域の平均海面水温は21.05℃と、9月として過去最高を記録しました。同発表では、熱帯太平洋でエルニーニョが強まっていることも報告されています。

世界気象機関(WMO)は、世界食料デーに当たる2026年10月16日に公表した記事で、強まりつつあるエルニーニョが各地の降水パターンを変化させ、干ばつや豪雨を通じて農業、漁業、食料生産に影響を及ぼしていると伝えています。ただし、その影響は一様ではありません。WMOは、地域や季節に加え、既存の環境条件や他の気候要因によっても影響が異なると説明しています。

同記事によると、東アフリカの「大アフリカの角(Greater Horn of Africa)」北部では、2026年6~9月の降水量不足により、土壌水分の不足や植生ストレスが生じました。一方、同地域の赤道付近から南部では、10~12月に平年を上回る降水量が予測されています。多雨は農作物や家畜に必要な水の確保に役立つ一方、過剰な降雨は洪水、地すべり、農業被害などのリスクを高めると、WMOは指摘しています。

南アジアでは、6~9月のモンスーン期に複数の地域で降水量の不足が確認されました。また、10~12月の降水量の見通しは地域によって異なります。南米についても、WMOは、エルニーニョ時にブラジル北部では乾燥しやすく、南部では9~1月に降水量が多くなりやすいという、対照的な傾向を紹介しています。

こうした地域差や季節差に対応するため、WMOは、地域別の季節予測や各国の予報を、具体的な判断に役立つ情報へとつなぐ取り組みを紹介しています。農家が作付け時期を決める、人道支援機関が緊急援助を準備する、政府が水管理を計画するといった場面で、気候科学を実践的な情報として活用する取り組みです。

これらの報告を踏まえ、本稿では、予測情報を伝えるだけでなく、地域の営農条件や利用者のニーズに応じた備えと行動につなげることが重要だと考えます。また、エルニーニョによる影響への対応を、より幅広い農業リスク管理を考える機会として捉えたいと思います。

国際農研が開催するJIRCAS国際シンポジウム2026「マルチハザード時代における農業リスクに挑む―科学技術イノベーションと現場実装から学ぶ―」では、複数のハザードが同時または連続して発生し、その影響が連鎖・増幅するリスクへの対応を取り上げます。対象は極端な高温、干ばつ、洪水などにとどまらず、病害虫や農業資材の供給不安なども含みます。2026年11月26日(木)に、秋葉原コンベンションホールとオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で開催します。

基調講演では、英国気象庁のJoseph Daron氏が、アフリカ・アジアのレジリエンス強化に向けた気候サービスと、複数の災害に対応する早期警戒システムを取り上げます。国連食糧農業機関(FAO)の金丸秀樹氏は、気候変動に強い農業の実現に向けた複合リスク管理について講演します。続く「社会実装の現場から学ぶ」セッションでは、ネパールにおける気候情報と農家の意思決定や、サブサハラ・アフリカの小規模稲作農家に向けた増収技術開発などを取り上げます。情報や技術を農家に届け、実際の活用につなげるための課題と教訓を共有します。

さらに、国際稲研究所、インド農業研究委員会、ベトナム農業環境研究所、アジア開発銀行などの関係者を交え、現場実装の拡大と国際連携の推進について議論します。地域の条件に応じて情報や技術を活用する方法や、その成果を他の地域へ展開するための方策を、国内外の知見と実践事例から探ります。

 

JIRCAS国際シンポジウム2026
「マルチハザード時代における農業リスクに挑む-科学技術イノベーションと現場実装から学ぶ-」

開催日時:2026年11月26日(木)13:30~17:30
開催場所:秋葉原コンベンションホール2階 A・Bホール (東京都千代田区外神田1-18-13) 
     会場参加とオンライン参加を組み合わせたハイブリッド形式
使用言語:日本語・英語 (同時通訳あり)
参加費:無料 (どなたでも参加できます)
申込方法:国際農研のホームページからお申し込み下さい。
     URL: https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2026/e20261126_jircas

 

参考文献
World Meteorological Organization (WMO). “El Niño looms large on World Food Day.” 16 October 2026. https://wmo.int/media/news/el-nino-looms-large-world-food-day

Copernicus Climate Change Service (C3S). “Copernicus: Second warmest September as global temperatures stay above 1.5°C.” 12 October 2026. https://climate.copernicus.eu/copernicus-second-warmest-september-globa…

関連するページ