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1564. 気候変動に伴う水不足が世界の小麦価格の上昇リスクを高める可能性

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1564. 気候変動に伴う水不足が世界の小麦価格の上昇リスクを高める可能性

 

気候変動に伴う水不足の深刻化は、作物収量への影響にとどまらず、国際市場を通じて食料価格の変動にも影響を及ぼす可能性があります。Earth’s Future誌に掲載された論文は、主要穀物のうち小麦について、世界の主要生産地域で発生する深刻な水不足の広がりと国際価格の年変動との間に、明確な関係があることを示しました。

研究チームは、2000年から2021年までの気候データ、作物生産地域、作物暦、国際商品価格のデータを組み合わせ、「深刻な水不足(Severe Water Scarcity:SWS)」の指標を作成しました。この指標は、作物が水不足の影響を受けやすい生育期間に、深刻な水不足にさらされた世界の作付地の割合を示すものです。局地的な干ばつのみを見るのではなく、複数の主要農業地域が同時期、または短期間に相次いで水不足に見舞われる状況を評価している点に特徴があります。

同研究の分析結果によれば、2000年から2021年までの世界の小麦価格の年変動について、SWSの影響を受けた小麦作付地の面積割合だけで、その約74%を説明できることが示されました。一方、トウモロコシでは水不足と価格の関係は小麦より弱く、コメでは小麦と同程度の関係は確認されなかったとされています。

過去のデータでは、世界の小麦栽培面積の平均約5%が毎年深刻な水不足の影響を受けていました。しかし、2000年、2010年、2012年、2020年のような乾燥年には、この割合が15%を超えました。研究チームによる将来予測では、温暖化が進行するにつれて、深刻な水不足にさらされる小麦栽培地域が拡大し、小麦価格の上昇リスクも高まる可能性が示されています。

研究チームは、干ばつや水不足だけが小麦価格を決めるわけではないことを明確にしています。実際の小麦価格には、エネルギー・肥料価格、穀物在庫、貿易政策、物流、市場参加者の行動、地政学的緊張や紛争など、多数の要因が影響します。本研究は、それらの要因を否定するものではなく、従来は定量化が難しかった気候起因の水不足が、国際小麦市場に影響する重要な要因の一つであることを示したものです。

小麦は国際貿易への依存度が高く、多くの国・地域で主食や主要な食料原料として利用されています。このため、特定の生産地における不作だけでなく、複数の穀倉地帯で水不足が重なる複合的な気候リスクは、輸入国を含む国際的な食料安全保障に波及するおそれがあります。著者らは、将来の食料安全保障評価において、平均収量の緩やかな変化だけでなく、複数の主要生産地に同時または短期間に連続して影響する大規模な水不足・干ばつ事象を考慮する必要があると指摘しています。本研究は、気候変動への適応策として、農業生産現場での水管理や耐乾性品種の開発に加え、国際市場や食料供給網におけるリスク管理の重要性を示しています。

 

(参考文献)
Trnka, M., Meitner, J., Balek, J., Feng, S., Arbelaez Gaviria, J., Fischer, M., et al. (2026). Climate-Induced Severe Water Scarcity Events as Harbingers of Global Wheat Price. Earth’s Future. https://doi.org/10.1029/2025EF006095

(文責:戦略統括室 飯山みゆき)

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