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951. 水不足の解決へ~水資源の拡充と多様化

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951. 水不足の解決へ~水資源の拡充と多様化

 

世界中の多くの国で水不足が深刻化しています。水資源の確保・管理・保全において、より革新的で持続的な利用方法が求められます。今日は国連環境計画が公開したストーリー記事を紹介します。

今日、世界で約24億人が、一国の水需要を満たすため再生可能な淡水資源の25%以上を採取して利用する、「水ストレス国」に居住していると言われています。

水ストレスは南アジア、中央アジア、北アフリカ諸国に集中する一方、米国のようなインフラ整備が整った先進国でも貯水レベルの記録的低下といった潜在的な水不足に晒されています。国連食糧農業機関(FAO)よると2025年までに18億人が「絶対的な水不足」に直面する可能性が高く、世界人口の3分の2が「水ストレス」に直面すると予想されています。

どの国・地域においても、気候変動・都市化・人口増加・土地開発や土壌汚染が水不足の主要な原因として挙げられています。地下水に限定されない、新たな採水源の創出や多様化の試みが各国で進んでいます。これらの一部を紹介します。


歴史的に飲用水などは地下帯水層に依存してきましたが、近年、過剰利用や乾季・干ばつの長期化によって枯渇しつつあります。これに対し、各地で慣行にとらわれない新たな試みが進められています。

チリやペルーの農村では、微細なメッシュを使用して霧からの水滴を捕えてため池に取り込んでいます。また、廃水の再利用も注目を集めています。国連環境計画は2023年の報告書において、廃水浄化によって現在の脱塩処理場が供給する10倍量の淡水が供給可能であるとしました。廃水はまた、エネルギー・養分、そのほか再利用可能な材料の供給源となりえますが、世界でも安全に処理されるのは生活排水の58%に過ぎません。汚染やマイクロプラスチック・抗生物質混在への懸念はあるものの、専門家らは、浄化技術のさらなる発展と適切な政策により、廃水を生まれ変わらせることも可能としています。

一方、近年、脱塩処理による海水淡水化を通じた飲用水生産に取り組んでいる国もあります。国連の2018年に実施した調査によると、世界で15,906軒の脱塩処理プラントが1日に約9,500万m3の脱塩水を生産し、その48%が西アジアと北アフリカの処理プラントによるものとしています。しかしながら、脱塩プラントの設置はインフラ整備に多額の投資を要し、エネルギー消費が多いため、化石燃料削減取り組みに反するとして慎重な対応が求められています。

さらなる水を求めて、雲にヨウ化銀を放出して雨や雪を降らせるクラウドシーディング技術を実験する国も増えています。オーストラリア、南アフリカ、中国では具体策が取られる中、他の地域で予期せぬ干ばつ等を招かないよう、専門家は規制を呼びかけています。


以上を例として、各国が新たな淡水源を模索する中、専門家らは、地域社会は現在ある水をより適切に管理する必要もあると指摘します。例えば、農業システムにおける点滴灌漑への投資や、世界人口の半数以上を抱える都市部における配管欠陥による漏水を防ぐためインフラ改善など、様々な方法があります。既存の水資源をより効率的に利用しながら、新たな(非在来型の)水源を活用することは、人々の生活と生計を改善する大きな可能性を秘めています。


(文責:情報プログラム トモルソロンゴ、飯山みゆき)


 

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