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1562. 野菜の生物多様性を守り、多様で健康的な食生活へ
1562. 野菜の生物多様性を守り、多様で健康的な食生活へ
米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論説は、世界的に野菜の摂取量が推奨量を大きく下回っている現状を踏まえ、野菜の「生物多様性」を食生活の改善に向けた重要な鍵として位置づけています。野菜はビタミン、ミネラル、食物繊維などを供給する重要な食品群です。しかし、生産量の不足や価格の高さに加え、食文化や嗜好の違いなども影響し、多くの地域で十分に消費されていません。著者らは、野菜として利用される種や品種、在来品種、野生近縁種などの多様性が十分に保全・活用されていないことが、栄養改善や気候変動への適応を妨げる一因となっていると指摘しています。
論文によれば、野菜は植物由来の食品群の中でも特に幅広い系統的多様性を有し、葉、果実、根、茎、花など、さまざまな部位が食用に利用されています。世界には少なくとも1,482種の野菜が存在するとされ、実際にはさらに多くの種が利用されている可能性があります。一方で、市場の画一化、土地利用の変化、在来品種や地域固有の食文化の衰退などにより、野菜の多様性は失われつつあります。過去100年間の野菜における遺伝的侵食を扱った研究の多くは、品種や遺伝的多様性が大幅に減少したことを報告しています。また、主要な野菜作物の野生近縁種の一部は絶滅の危機に直面しており、研究や育種に活用できる遺伝資源の減少が懸念されています。
著者らは、野菜の生物多様性を食生活の改善につなげるため、次の4つの行動分野を提案しています。
1. 生物多様性の損失と栄養不良が重なる地域において、在来品種や野生近縁種を収集し、再生・保全すること。
2. 保全された遺伝資源を研究、育種、品種評価に活用し、気候変動や病害虫に強く、栄養価の高い新品種の開発につなげること。
3. 学校給食、家庭菜園、地域市場などを通じ、多様で栄養価の高い野菜の生産・利用を促進すること。
4. 農業、栄養、保健、教育、気候変動、生物多様性に関する政策枠組みに、野菜の生物多様性の視点を組み込むこと。
論文は具体例として、アフリカの一部地域で利用されるスパイダープラント、アジアやカリブで広く食されるニガウリ、太平洋地域で重要な葉物野菜であるスリッパリーキャベツ、そしてカボチャを取り上げています。これらの作物は、栄養価の向上や気候変動への適応能力という点で大きな可能性を有しています。その一方で、遺伝資源の保全、種子供給体制の確立、育種基盤の強化、政策的支援の充実などが課題とされています。
著者らは、野菜不足を単に生産量や摂取量の問題として捉えるのではなく、野菜の多様性をいかに保全・活用し、日々の食卓へ届けるかという課題として捉える必要があると論じています。在来野菜や野生近縁種を含む野菜遺伝資源の保全と利用は、栄養改善、気候変動への適応、生物多様性の保全を同時に進めるための重要な手段であると結論付けています。
(参考文献)
Maarten van Zonneveld, et al. 2026. Reversing vegetable biodiversity loss to diversify diets. PNAS, 123(31): e2532063123. https://doi.org/10.1073/pnas.2532063123
(文責:戦略統括室 飯山みゆき)