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378. 気温抑制・生物多様性回復・健康保護のための国際協調の緊急性

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378. 気温抑制・生物多様性回復・健康保護のための国際協調の緊急性


2021年9月上旬、9月中旬の国連総会、10月のCBD、11月のCOP26といった重要な国際会議を前に、The LancetThe New England Journal of Medicinethe British Medical Journalを含む世界の200誌を超える医学誌の編集長らが 共同で論説を発表し、世界の指導者たちに対し、気候変動が世界の公衆衛生にとって最大の危機であること、気温上昇抑制・生物多様性回復・健康保護のための緊急の対応策が必要であること、について訴えました。

著名医学誌の編集長らは、世界の気温上昇や自然破壊による健康への破滅的な影響はこのままでは取り返しがつかないとし、COVID-19パンデミック収束を待たずに、温室効果ガス排出削減に直ちにとりかからなければならない、としています。


過去20年間、熱波関連での65歳以上の死亡率は50%以上上昇しました。気温上昇は、脱水症状や腎機能不全、熱帯感染症、皮膚疾患、妊娠合併症、精神衛生悪化、等をもたらし、子供やマイノリティ、貧困層や既に健康問題を抱えている脆弱な社会層に取り返しのつかない影響をもたらします。

世界的な気温上昇はまた、主要な作物の収量を抑制します。実際に作物生育期間でみた収量ポテンシャルは1981年以来1.8‐5.6%下落し、極端気象や土壌劣化によって栄養失調解決の努力を阻んでいます。健全なエコシステムは人類の健康にとっての前提条件ですが、自然破壊の拡大によって、水や食料安全保障が侵され、パンデミックの可能性が上昇しています。

気候変動は、その原因に最も関与せず、緩和策を施行するキャパシテイに欠けている国や人々に最大の被害をもたらしています。同時に、豊かであってもこれらの影響から逃れられる国はありません。脆弱層への負の影響を放置することで、紛争・食料不安・強制移動・人獣共通感染症が起こりやすい条件が揃い、COVID-19パンデミックで実証済みのように結局は全ての国々が影響を受けることになります。

産業革命以来の気温上昇が1.5℃を超えると、自然界における転換点(臨界点、Tipping points)に達することで、世界は急激に不安定な状態に置かれる可能性が高まり、被害を緩和し、災害を回避する能力を損ねかねません。医学誌による共同論説は、国際協調の緊急性を訴えました。


参考文献

Lukoye Atwoli, et al. Call for Emergency Action to Limit Global Temperature Increases, Restore Biodiversity, and Protect Health. 

The Lancet: https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)0191… 

The New England Journal of Medicine: https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe2113200?query=featured_home&…;

The BMJ: https://www.bmj.com/content/374/bmj.n1734 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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