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1550. 東南アジア連絡拠点だより:タイ畜産の生産性向上を目指して―牧草「イサーン」の可能性

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1550. 東南アジア連絡拠点だより:タイ畜産の生産性向上を目指して―牧草「イサーン」の可能性

 

近年の経済成長と食生活の変化に伴い、タイでは牛乳や牛肉の需要が増加しています。一方で、生産現場では飼料費の高騰や気候変動への対応が大きな課題となっています。

公開統計によれば、酪農分野では乳牛飼養頭数は約55万頭、生乳生産量は年間120万トン規模とされています(FAOSTAT)。また、タイはASEAN地域における主要な乳製品輸出国の一つであり、2024年の乳製品輸出額は約5.8億ドルに達し、前年を上回る成長が報告されています(Ashu Research Inc.)。一方、肉牛産業では、2024年時点で飼養頭数は約990万頭、約140万戸の農家が肉牛生産に従事しているとされています。また、牛肉需要の拡大を背景として、生体牛の輸出も増加傾向にあると報告されてます(FAOSTAT; DTN, 2024)。

このように畜産生産は拡大していますが、タイの酪農・肉牛産業に共通する課題として、飼料問題が挙げられます。多くの農家では、稲作由来の稲わらが主要な粗飼料として利用されていますが、稲わらは栄養価が低く、家畜の増体や乳量の向上には限界があります。また、輸入濃厚飼料への依存は生産コスト上昇の一因となっており、飼料生産性の向上が喫緊の課題と考えられます。こうした課題の解決に向けて、国際農研はタイ畜産振興局(DLD)、農研機構、宮崎大学、沖縄県と共同で、暖地型イネ科牧草「イサーン(Isan)」を開発しました。イサーンは、日本では2021年、タイでは2024年に品種登録されており、アジアモンスーン地域への適応を目的とした牧草品種です。

イサーンの主な特長として、高収量・高栄養価・耐乾性が挙げられます。乾物収量は年間約20t/haに達し、既存品種と比較して高い生産性を示します。また、粗タンパク質含量が高く、肉牛や乳牛に必要な栄養を効率的に供給できます。さらに、乾燥条件への適応性を有し、乾季が長いタイ東北部においても安定した生産が可能とされています。

*品種名の「イサーン」はタイ語で「東北地方」を意味します。

今後、イサーンの普及により高品質な粗飼料の供給が進展すれば、肉牛の肥育効率の向上や乳牛の乳量増加が期待されます。タイの畜産業が抱える「低栄養飼料への依存」という課題に対し、日タイ共同研究によって開発された本品種は、生産性と持続性の向上に貢献する技術として期待されています。

 

参考資料:
国際農研プレスリリース:暖地型イネ科牧草「イサーン」をタイ王国で品種登録
https://www.jircas.go.jp/ja/release/2024/press202415
Ashu Research Inc.: Thailand: Dairy Products
https://cms.scout.asia/wp-content/uploads/2025/10/20251021-THB-27-04.pdf
FAOSTAT
https://www.fao.org/faostat/en/#home
タイ商務省 国際貿易交渉局(Department of Trade Negotiations: DTN):ニュースリリース(2024年12月12日)
https://www.dtn.go.th/th/content/page/index/id/13543


文責:東南アジア連絡拠点 金森紀仁
 

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