Pick Up
1547. 気候変動が欧州の干ばつを深刻化―高温化と蒸発散の増加が水・農業リスクを拡大
1547. 気候変動が欧州の干ばつを深刻化―高温化と蒸発散の増加が水・農業リスクを拡大
2026年春から初夏にかけて、ポルトガルからフィンランドに至る広範囲で降水量が平年を下回り、熱波も重なったことで、農業、水資源、河川輸送、エネルギー供給などに影響が生じています。
極端現象と気候変動の因果関係を分析する国際研究コンソーシアムであるWorld Weather Attribution(WWA)は、2026年に欧州で発生している干ばつについて分析を行い、人為的な気候変動に伴う気温上昇が干ばつの深刻化に大きく寄与しているとの評価を報告しました。
WWAによると、土壌水分を指標とした農業・生態系干ばつの分析の結果、西ヨーロッパでは2026年4~6月の土壌水分不足が現在の気候条件下で約5年に1度、東ヨーロッパでは1~6月の土壌水分不足が約15年に1度の頻度で発生する規模と推定されています。また、人為的な気候変動の影響により、このような土壌干ばつの発生確率は、西ヨーロッパで約5倍、東ヨーロッパで約11倍に増加したと評価されています。
一方、WWAの分析では、西ヨーロッパにおける2026年4~6月の降水量不足そのもの(気象学的干ばつ)については、観測データおよび気候モデルのいずれからも長期的な変化傾向は確認されず、気候変動の影響は明確には示されなかったとされています。他方で、気温上昇に伴う潜在蒸発散量(Potential Evapotranspiration: PET)は大きく増加しており、その結果、農業・生態系干ばつが発生しやすく、かつ深刻化していると分析されています。さらに、WWAは、2026年春に観測されたような高い蒸発散条件の発生確率が、西ヨーロッパで約80倍、東ヨーロッパで約40倍に増加したと推定しています。
同報告によれば、干ばつはすでに欧州各地で深刻な影響を及ぼしています。例えば、フランスではトウモロコシの収穫量が過去50年間で最低水準となる可能性が指摘されており、ルーマニアでは100万haを超えるトウモロコシ栽培地で被害が報告されています。また、多くの国で飲料水の利用制限が導入されているほか、河川水位の低下による内陸水運への影響や、水力発電への依存度が高い地域における発電リスクの増大も懸念されています。
WWAは、今後さらに温暖化が進行した場合、高い蒸発散量を伴う干ばつがより発生しやすくなると指摘しています。また、EUでは農業保険や緊急支援制度などの対策が進められている一方で、加盟国間における干ばつ管理体制には差があることから、水資源管理および干ばつ対応の強化に向けた、より統一的な政策枠組みの必要性が指摘されています。
(参考文献)
World Weather Attribution (2026). Increasingly hot Europe faces more severe droughts and growing challenges for water and land management.
https://www.worldweatherattribution.org/increasingly-hot-europe-faces-m…
(文責:戦略統括室 飯山みゆき)