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1472. 持続可能な食料システム転換を支える社会経済的経路――システマティックレビューからの示唆

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1472. 持続可能な食料システム転換を支える社会経済的経路――システマティックレビューからの示唆

 

食料システムの持続可能な転換に向けた議論は近年ますます活発化していますが、その実装には社会経済的条件が大きく影響します。Nature Food 誌で発表された論文は、1,700本以上の関連文献を精査し、そのうち349本を対象に詳細なレビューを行うことで、異なる地域文脈における社会経済的要因の役割を体系的に分析しました。

論文の分析の結果、持続可能な食料システムへの転換として、土壌と土地資源の健全化、精密農業の導入、食生活の変化と新たな食品への移行、栄養と健康の改善、食品ロス・廃棄物の削減、淡水・海洋生態系の保全、気候変動緩和と生物多様性保全という七つの主要領域が整理されました。また、これらの転換を左右する社会経済的要因として、ネットワークや価値観、人口属性(性別・年齢・家族構成)、教育・情報、所得と価格、政策・制度、インフラが抽出されています。特に所得や価格は、生産者の技術採択や消費者の食行動の双方に強い影響を及ぼす重要な要因であることが示されています。

地域別に見ると、欧米やオセアニアでは食生活の変化に関する研究が多く、肉中心の消費構造や肥満問題が背景にあります。一方、アジアや北アフリカでは精密農業、サハラ以南アフリカや中南米では土地資源や土壌管理が主な関心領域となっており、地域ごとの経済発展段階や資源制約が研究の焦点を規定しています。また、持続可能な選択肢であっても、高コストや文化的抵抗、政策的制約により導入が進まない場合があり、例えば食品ロス削減にはサプライチェーン全体での調整が必要であるほか、代替食品の普及には価格や嗜好の壁が存在します。

こうした課題を踏まえ、本研究は食料システムの各段階に応じた社会経済的経路を提示し、持続可能な転換を支える方向性を示しています。ただし、要因間の相対的重要性や相互依存関係については、現時点の文献から一般化することは難しく、今後の研究課題として残されています。論文は、政策立案者や実務者に対し、科学的知見に基づく体系的理解を提供するとともに、関係主体ごとの具体的な行動指針を提示しました。

 

(参考文献)
Chrisendo, D., Heikonen, S., Piipponen, J. et al. A systematic review of sustainable food systems identifies socio-economic pathways driving food systems transformations. Nat Food 7, 234–246 (2026). https://doi.org/10.1038/s43016-026-01317-0

(文責:戦略統括室 飯山みゆき)

 

 

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