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972. グローバル資源利用のトレンドと見通し

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972. グローバル資源利用のトレンドと見通し

 

世界は気候変動・生物多様性喪失・環境汚染という地球危機の三重苦 -トリプルプラネタリークライシス- に直面しています。世界的に自然資源消費のペースが加速する中、SDGsの達成はより困難になりつつあります。3月1日、国連環境計画(UNEP)は、「グローバル・リソースアウトルック2024」を公表、持続的な環境・社会の実現のために過剰な資源消費トレンドの方向転換(bend the trend)を呼びかけました。

化石燃料・鉱物資源・非金属鉱物・バイオマスといった資源の採掘と加工は、温室効果ガス排出の55%以上を占め、微粒子状物質由来の健康被害の原因の40%に相当します。土地利用変化を考慮すれば、資源の利用による気候インパクトは60%を超え、なかでもバイオマス利用のインパクトが最大(28%)で、化石燃料利用(18%)と非金属鉱物・金属利用(合わせて17%)が続きます。バイオマス(農作物・森林)資源利用は、土地利用関連の生物多様性喪失・水ストレスをもたらす原因の90%以上に該当します。建築環境やモビリティシステムを筆頭に、食料システム・エネルギーシステムが資源利用の需要をけん引し、これらシステムを合わせて世界の資源需要の90%を占めます。資源利用は2020年の1000億トンから2060年までに1600億トンと60%増加しかねないとも予測されており、資源利用の在り方を見直す緊急かつ抜本的なアクションが必要とされています。


以下、報告書のメッセージを挙げます。

1 資源の過剰消費が地球危機の三重苦の主要な要因である

2 過去50年間に物質材料の資源利用は3倍以上増加し、年平均2.3%での増加が見込まれている

3 物質利用・加工による気候・生物多様性への影響は、気候変動を1.5℃に抑制し、生物多様性喪失を回避するという国際的な目標達成に向けた合意から大きく乖離している

4 SDGsの達成には、資源利用が増加することによる便利さを享受しつつも、資源利用による環境インパクトを減らしていく、即ち両者を「切り離す(decoupling)」ことが必要となる

5 低所得国に比べ、高所得国における一人当たり物質利用は6倍、気候インパクトは10倍に相当する  

6 歴史的トレンドからみて、資源利用を減らしながらも、経済成長を達成しつつ、格差をなくし、人々の生活を改善し、環境インパクトを大幅に削減することは可能である  

7 持続的でない活動を段階的に廃止し、人類のニーズを満たしながらも必要な変革を推進するために、確固たる意志に基づく政策アクションがカギを握る

8 供給(生産)サイドの施策のみに焦点を当てた既存のアプローチに加え、需要(消費)サイドに焦点を当てた施策を従来以上に講じる必要がある  

9 科学者のコミュニティは、将来世代も含むすべての関係者の利害を尊重し、エビデンスに基づいて解決に向けて団結すべきである 

 

(参考文献)
United Nations Environment Programme (2024): Global Resources Outlook 2024: Bend the Trend – Pathways to a liveable planet as resource use spikes. International Resource Panel. Nairobi. 
https://wedocs.unep.org/20.500.11822/44901

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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