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935. グローバル・リスク2024

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935.  グローバル・リスク2024

 

1月10日、世界経済フォーラムは、グローバル・リスク報告書2024年版を公表、激動の2023年を振り返り、急激に不確実性が増す世界情勢を見通しました。

2023年9月に行われた調査によると、次の2年間の短期では世界が不安定化する或いは大惨事がおきる可能性があるとした意見が過半数(54%)であったのに対し、10年間の長期見通しはより悲観的で、回答者の3分の2近くに達しました。

2024年報告書は、次の10年間のリスクが実現する可能性とそれをマネジメントするうえで決定的となる4つの構造的要因を通じて分析しました。

  • 地球温暖化及び地球システムに関する動向(気候変動:Climate Change)
  • 世界人口の規模・成長率・構造変化(人口動態の分岐傾向:Demographic bifurcation)
  • 最先端技術の開発動向(技術的な加速:Technological acceleration)
  • 地勢力学の集中と原動力の進展(戦略地政学的なシフト:Geostrategic shifts)



環境リスクへの懸念は高く、回答者の3分の2が異常気象を世界規模で起こりうるリスクのトップに掲げ、10年間の長期リスクのトップテンの多くが環境関係となりました。一方、環境リスクの緊急性の認識には世代間ギャップも見られました。生物多様性やエコシステムの崩壊、地球システムへの変化については、年配世代の方が若者に比べ、また民間部門の方が市民社会や政府の方に比べ、長期的なリスクとみなす傾向があり、地球システムの課題解決に短期的にも優先順位を置く若者・市民社会や政府との認識のギャップがありました。主要な関係者の間での認識の温度差は、意思決定において調整が最適化されず、介入のタイミングを逃しかねないリスクをはらみ、地球システムの長期的な変化に陥る可能性があることを示唆しています。

社会の二極化は、経済低迷と密接に関連し、複数のリスクの原因および結果としてみなされています。とりわけ社会分断を悪化させる誤報・偽情報が次の2年間に懸念される最大のリスクとして浮上しました。今後2年間において、バングラデッシュ・インド・インドネシア・メキシコ・パキスタン・イギリス・アメリカでは選挙が予定されています。30億人相当の世界人口の投票機会において、偽情報が政権の正統性を揺るがすようなことがあれば、社会不安が増幅される懸念があります。選挙にとどまらず、公衆衛生から社会正義にわたり、世界の現実についての認識が二極化していくことで、プロパガンダと検閲が高まり、幾つかの国では報道の自由が脅かされるリスクもあります。

その他、生活費高騰、地政学的衝突の伝播、グローバル・ノースとグローバル・サウスの力学下における国際ガバナンスメカニズムの機能不全、がリスクとして挙げられました。

報告書は、分断され流動的な世界において、地域および国際協力は、課題に直面しながらも、グローバル・リスクの緩和において重要な役割を果たすべきとしています。

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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