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455. グローバル・リスク2022

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455. グローバル・リスク2022

世界経済フォーラム(WEF)が毎年1月に公表するグローバル・リスク報告書は、世界の指導者達の視点から地球規模問題の動向を占ううえで注目されています。

新型コロナウイルスが中国から世界に拡散しつつあった2年前に発表された2020年グローバル・リスク報告書は、次の10年間に起こり得るグローバル・リスク上位5件全てに環境問題・気候変動リスクを挙げていました。

2021年は、パンデミックの1年間を回顧し、最大のインパクトを伴うリスクとして感染症を1位にランクし、その他、気候変動対応策の失敗(2位)、大量破壊兵器(3位)、生物多様性喪失(4位)、自然資源危機(5位)を挙げました。他方、今後起こり得るリスクのランキング上位は、4位の感染症とともに、極端気象(1位)、気候変動対応策の失敗(2位)、人為的な環境破壊(3位)、生物多様性喪失(5位)等、環境・気候変動関連のリスクが占めました。

今年の報告書は、1月11日に公表されました。

世界的指導者への意識調査によると、パンデミック開始後に社会・環境リスクが悪化し、とりわけ「社会的結束の弱体化」や「生活の危機」が懸念の上位にランクしました。そのほか、「債務危機」や「サイバーセキュリテイの失敗」、「デジタル格差」そして「科学への反発」といったリスクが上がりました。

時間的(horizon)視点からは、次の2年間という短期には、「社会の結束力 の弱体化」や「生活の危機」や「メンタルヘルスの悪化」が最大の懸念として浮上しました。一方、地球の健康も重要視され、「極端気象」や「気候変動対策の失敗」が短期・中長期的なリスクの上位に挙がりました。中期的には、債務危機や資産バブルの崩壊が、長期的には地政学的・技術的なリスクも浮上しています。

厳しさ(severity)という観点から、次の10年間に地球規模で人類・地球に最も苛烈なリスクをもたらすと懸念されているのは環境・気候変動関連のリスクが多く、「気候変動対策の失敗(1位)」、「異常気象(2位)」、「生物多様性喪失(3位)」、「社会的結束の弱体化(4位)」、「生活の危機(5位)」、「感染症(6位)」、「人間による環境ダメージ(7位)」、「自然資源危機(8位)」、「債務危機(9位)」、「経済地理的紛争(10位)」でした。

報告書はまた、国際社会がCOVID-19を抑え込みパンデミックから立ち直るのに協力しなければならない現在、各国間で不均衡な回復軌道により政策プライオリティの足並みがそろわないことに懸念を示しました。先進国・途上国ともに経済停滞とインフレ・債務の問題が保護主義をもたらし、パンデミック後の経済停滞が世界を分断させかねないと警鐘をならしています。


(参考文献)

The World Economic Forum. The Global Risks Report 2022, 17th Edition. https://www.weforum.org/reports/global-risks-report-2022

(なお、本ブログは、World Economic Forumから公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にあります。)

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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