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912. 世界土壌デー2023「生命の源である土壌と水」

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912.世界土壌デー2023「生命の源である土壌と水」

 

国連が提唱する「世界土壌デー」は、健康な土壌の重要性に注目し、土壌資源の持続可能な管理を提唱するため、毎年12月5日に開催されています。今年のテーマは「生命の源である土壌と水」です。2023年世界土壌デーとそのキャンペーンは、持続可能で回復力のある農産物システムの実現における土壌と水の重要性と関係についての意識を高めることを目的としています。

私たちの地球の存続は、土壌と水の間の貴重なつながりにかかっています。私たちの食物の 95パーセント以上は、これら二つの基本的な資源から生じています。土壌中の水は、植物による栄養吸収に不可欠であり、私たちの生態系を結びつけています。この共生関係が、私たちの農業システムの基礎となっています。

しかし、気候変動と人間の活動によって、土壌は劣化しており、水資源に過剰なプレッシャーをかけています。土壌の侵食は自然のバランスを崩し、水の浸透性や、あらゆる生き物の水利用の可能性を減少させています。

最小限の耕作、輪作、有機物の添加、被覆作物などの持続可能な土壌管理方法の実践は、土壌の健康を改善し、侵食と汚染を軽減し、水の浸透性と貯留を強化することができます。これらの方法の実践は、土壌の生物多様性を維持し、肥沃度を向上させ、炭素の隔離にも貢献し、気候変動との戦いにおいて重要な役割を果たしています。

特にアフリカの多くの国々では、人口増加に伴う食料需要の著しい上昇に対して、農業生産性の向上が追い付いておらず、慢性的に食料輸入に依存しています。アフリカでは特に土壌と水が食料生産の大きな制限要因となっており、食料生産性の改善には、土壌と水の十分な理解とその情報に基づいた土壌と水の管理技術の確立が必要です。

 

国際農研の代表的な取組

国際農研は、こうした問題を抱えるアフリカにおいて、国内外の研究機関、行政機関等とともに、土壌と水の管理技術の改善に資する研究に長年取り組んできました。現在は、アフリカ稲作システムプロジェクト及びアフリカ畑作システムプロジェクトにおいて、アフリカにおけるレジリエントで持続的な食料生産システムの構築を目標とし、土壌と水の適切な管理技術開発に取り組んでいます。最近のトピックとして、以下のような研究成果や活動があります。  

 

【研究成果1】西アフリカ半乾燥地域の重要作物ササゲに対する気候変動の影響を収量予測モデルにより推定―干ばつとともに過湿への対策が必要になることを示唆―

・西アフリカの重要作物ササゲの圃場栽培データに基づき、乾燥や過湿条件での収量予測精度を改善
・気候変動により西アフリカ半乾燥地域では降雨頻度が増すと予測され、過湿になりやすい土壌では多雨年にササゲ収量が低下すると推定
・西アフリカ半乾燥地域では干ばつだけでなく、過湿への対策も必要になることを示唆

 

【研究成果2】サハラ以南アフリカの半乾燥地帯におけるソルガムの収量制限要因―土壌栄養欠乏を超えて―  

・サハラ以南アフリカでは半乾燥地域でも水不足ではなく土壌養分の不足と施肥量の少なさが作物収量の制限要因とされてきたが、土壌条件により水不足も収量を制限することを実証
・作物が根を伸ばせる土壌(有効土壌)の深さが50 cm未満の薄い土壌では、無施肥の場合は土壌水分は不足しないが、施肥を行うと土壌水分が不足し収量を制限
・この地域で食料安全保障を達成するためには、有効土壌の深さに応じた効率的な施肥方法の開発が重要

 

【研究成果3】サハラ以南アフリカの稲作圃場にみられる施肥管理と収量性・持続性の評価

・サハラ以南アフリカ24か国、235地点の稲作圃場にみられる施肥管理と収量性との関係を解析し、窒素およびリンの施用量とイネ収量との間に高い正の相関を検出。
・約4割の圃場で、収穫物として持ち出される養分量に対して、肥料投入量が不十分であり、長期的な視点での土壌からの養分収奪が懸念される。特に、リン肥料の適切な管理が重要。
・干ばつや冠水のリスクが高いなど、水条件が不安定な圃場で、農家は肥料投入量を抑制する傾向がある。イネの生産性向上と土壌の持続的管理において、水管理を含めたアプローチが必要。

 

【活動1】アフリカに適した環境再生型農業を構築するTERRA Africa(テラ・アフリカ)プロジェクトが始動―日本財団事業による国際農研の新たな活動―

・国際農研は、日本財団の海外協力援助事業の枠組みで、アフリカに適した環境再生型農業の構築を目指す「TERRA Africa」プロジェクトを開始
・令和5年9月6日、ガーナ共和国にてプロジェクト発足記念式典を開催
・国内外の機関と連携し、アフリカに適した土壌・栽培管理技術(灌漑技術も含む)とその普及技術の開発を推進

 

【活動2】TICAD30周年記念公式サイドイベント「アフリカの持続的で強靭な食料システム構築に向けて」 

・令和5年12月1日、TICAD(アフリカ開発会議)30周年記念公式サイドイベントを開催
・アフリカの農林水産業に関する課題と日本の貢献、国際共同研究の歴史と現状、研究ニーズについて紹介
・作物、水資源、土壌、微生物、農業経営、栄養供給の観点から、アフリカ農業の多様性、それゆえに配慮すべき点や今後の国際共同研究などについて議論

 

国際農研は、引き続き、国内外の研究機関や行政機関とともに、アフリカにおけるレジリエントで持続的な食料生産システムの構築に向けて、土壌と水の適切な管理技術の開発に取り組みます。

 

参考文献

Iizumi, T., Iseki, K., Ikazaki, K., Sakai, T., Shiogama, H., Imada, Y., Batieno, B.J. (2023) Increasing heavy rainfall events and associated excessive soil water threaten a protein-source legume in dry environments of West Africa. Agricultural and Forest Meteorology, 109783, DOI : https://doi.org/10.1016/j.agrformet.2023.109783

Ikazaki, K., Nagumo, F., Simporé, S., Barro, A. (2023): Understanding yield-limiting factors for sorghum in semi-arid sub-Saharan Africa: beyond soil nutrient deficiency, Soil Science and Plant Nutrition, DOI: 10.1080/00380768.2023.2279582

Johnson, J.M., Ibrahim, A., Dossou-Yovo, E.R., Senthikumar, K., Tsujimoto, Y., Asai, H., Saito, K. Inorganic fertilizer use and its association with rice yield gaps in sub-Saharan Africa. Global Food Security, 100708. doi.org/10.1016/j.gfs.2023.100708 

 

関連するページ
United Nations, World Soil Day, 5 December, Soil and water, a source of life https://www.un.org/en/observances/world-soil-day

671. 世界土壌デー2022 https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20221205

西アフリカ半乾燥地域の重要作物ササゲに対する気候変動の影響を収量予測モデルにより推定―干ばつとともに過湿への対策が必要になることを示唆― https://www.jircas.go.jp/ja/release/2023/press202318

アフリカに適した環境再生型農業を構築するTERRA Africa(テラ・アフリカ)プロジェクトが始動―日本財団事業による国際農研の新たな活動― https://www.jircas.go.jp/ja/release/2023/press202309

TICAD30周年記念公式サイドイベント「アフリカの持続的で強靭な食料システム構築に向けて」 https://www.jircas.go.jp/ja/event/2023/e20231201

国際農研アフリカ農業研究特設ページ https://www.jircas.go.jp/ja/africa-research

 

(文責:食料プログラム 中島 一雄、生産環境・畜産領域 伊ヶ崎 健大・中村 智史・辻本 泰弘、生物資源・利用領域 井関 洸太朗、社会科学領域 酒井 徹、情報広報室 金森 紀仁、情報プログラム 飯山 みゆき)

 


 

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