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723. 建造環境への気候変動リスク

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723. 建造環境への気候変動リスク

過去50年間にわたり、干ばつ、嵐、洪水、極端な気温、といった極端気象の数は増加し、経済損失の規模は年々拡大しています。 経済損失の規模で大きいのは嵐や洪水であり、経済損失は1970年代から2010年代までに7倍になりました。気候変動による災害は、農業・食料栄養安全保障に大きな影響をもたらし、とりわけ温室効果ガス排出に貢献していない脆弱な社会層が損失と損害の犠牲になることへの問題意識も高まっています。

気候変動はまた、資産やインフラの破壊をもたらすことで、経済的にも大きなダメージをもたらし、サプライチェーンの寸断は世界経済をけん引する投資動向にも影響を及ぼします。2月20日、気候リスクの評価の専門集団であるXDI (The Cross Dependency Initiative)が、洪水・森林火災・海面上昇を含む異常気象による建造環境への経済的ダメージのリスクが高い行政地域トップ100に、世界経済をけん引する中国やアメリカの都市が多くランクインしたことを発表し、世界各地のメディアで話題になっています。

再調達原価に占める異常気象による資産のダメージ率で定義された気候リスクのランキングによると、世界の約2600の行政地域のうち、1位は江蘇省(Jiangsu)、2位は山東省(Shandong)そして9位の上海市(Shanghai)まで中国の省が占め、10位はアメリカ・フロリダでした。中国・インド・アメリカの都市だけでトップ100の半数以上を占め、そのほか、ブエノスアイレス、サンパウロ、ジャカルタ、北京、ホーチミン市、台湾、ムンバイ、がランクインしています。日本の行政地域では福岡が85位、東京は159位でした。オーストラリアやベルギー、イタリア、カナダ、ドイツの行政地域も100位入りしています。東南アジアは、1990年から2050年にダメージが加速した行政地域のランクで多数を占めました。

同ランクを行ったXDIによると、2022年だけでも、今回の分析で4位にランクした広東省における洪水は直接的な経済損失だけで10億ドルもの被害をもたらし、フロリダでは保険対象の損失だけでも推計670億ドルに及んだと推計されています。

 

少し以前、ブリティッシュコロンビア州での記録的な大雨によりインフラが破壊され、バンクーバー港への輸送手段を寸断したことで、世界へのフライドポテト原料の輸出が滞ったことがありました。食料生産に直接の影響がなくとも、気候変動によるサプライチェーンの寸断は、グローバル・フードシステムを通じ、食料安全保障に影響を及ぼす可能性があります。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)


 

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