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1171. 2024年‐気候変動の「リスクが現実に」

1171. 2024年‐気候変動の「リスクが現実に」
極端現象と気候変動の因果関係を分析するWorld Weather Attribution (WWA)は、2024年に人々の健康を脅かす熱波が41日間増加したことにも言及、気候変動の「リスクが現実に」なったと表現しました。
2024年、史上最高値に迫る高温が、熱波・干ばつ・森林火災・暴風雨・洪水といった極端気象を頻発化させました。WWAの分析によると26の事象により、少なくとも3700人の命を奪い、数百万人の人々の移動を余儀なくさせましたが、実際には2024年にWWA分析対象となる閾値に達した事象は219件あり、気候変動によって悪化した人的被害はずっと大きい可能性があります。このことは、人為的要因による1.3℃の温暖化のインパクトを示唆しており、地球温暖化をもたらす化石燃料削減の緊急性を示しています。
世界的にみて、2024年、気候変動は、人々の健康を脅かす熱波を41日間増加させました。このような危険な熱波はとりわけ島嶼国や途上国などの脆弱な社会に影響を及ぼしましたが、十分に報告されていないケースもあると推定されます。
2024年の初頭に起きた極端現象の多くは、エルニーニョ現象の影響も受けていますが、WWAの分析は、アマゾンの史上最悪の干ばつのようなケースでも、気候変動の要因が大きく、エルニーニョは状況を悪化させたにすぎないと推論されています。温暖化に伴い、自然現象を超えて気候変動が気象に影響を及ぼすようになっています。
2024年の記録的な高温は、記録的な豪雨現象という形でも現れました。WWAが分析した16の洪水のうち15が気候変動によって雨量が増加したと推計され、気候変動の物理学 -気温が高いほど空気が保持できる水蒸気が多くなる― 結果、豪雨を激化させることを裏付けました。
アマゾン熱帯雨林とパンタナール湿原も2024年、深刻な干ばつと火災によって深刻な生物多様性喪失の被害を受けました。アマゾンは世界で最も重要な陸域カーボンシンクであり、世界の気候の安定化にとって極めて重要な機能を果たしており、干ばつ・火災から生態系を保護するため、森林破壊の回避が急務となっています。
WWAは2025年新年の誓いとして、化石燃料からの脱却加速、早期警戒システムの向上、熱波による人的被害のリアルタイム報告、途上国向けのファイナンスの拡充、の必要性を呼びかけました。
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)