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673. 生物多様性に関する国際目標への合意に向けて

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673. 生物多様性に関する国際目標への合意に向けて

2022年も残すところ一月をきった今日この頃ですが、年の初めにPick Upで、2022年は生物多様性アジェンダ達成の運命を握る年である、という話題を紹介しました。

その背景には、100万種の動植物が絶滅の危機にさらされるという、生物多様性が恐竜絶滅以来の深刻な事態に達していことがあげられます。国連環境計画によると、人類の存在は、澄んだ大気・栄養ある食料・住みやすい気候に依存していますが、これらはすべて自然界に支えられているものです。健康な地球は強靭な経済の基盤でもあり、世界のGDPの半分以上に相当する41.7兆ドル相当の経済活動が健全なエコシステムに依存しているとの推計もあります。

2010年に名古屋で開催された国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)にて採択された2020年までに生物多様性の喪失を食い止めることを目標にした「愛知目標」が殆ど満たされなかったと評価されており、それに代わる目標への国際的合意が求められています。国際社会は、2030年までに生物多様性の喪失を減速させ、2050年までに生物多様性が保全されることを目指しています。その目標を定めるグローバル生物多様性枠組み(GBF:Global Biodiversity Framework)が議論される予定の国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)は、コロナ禍もあって何度か延期の憂き目にあってきましたが、開催地を中国・昆明からカナダ・モントリオールに移し、本日12月7日から始まります。

COP15は、気候変動におけるパリ条約と同等の、自然喪失のトレンドを反転させるための合意形成を目指しています。20以上の目標が交渉される見込みですが、その中には、殺虫剤使用の削減、侵略的外来種への対応、環境に負の影響をもたらす補助金削減、環境保全に対する公的・民間ファイナンスの増加、が含まれます。また、多くの地域において生物多様性喪失の原因の80%を占めるとされる農業や都市拡大に伴う土地利用変化の問題に対応することも期待されています。

こうした交渉において、自然にかかわる意思決定における先住民やローカル・コミュニティの参加や彼らの土地に対する権利の承認が必要となります。とりわけ、先進国が途上国における遺伝資源・データ等を利用することを鑑みて、生物多様性保全のためのファイナンス・支援を取り決めることが重要となります。

 


来週の月曜日に開催予定のセミナーでは、途上国における貴重な遺伝資源について、先住民やローカル・コミュニティの参加を促し、栄養改善・生活向上に資する科学・伝統知の役割についても論じられる予定です。


セミナー
栄養改善と生活向上に資するローカル・ランドスケープ由来の食利用を促進するための科学と伝統知の適用
主催    国際農林水産業研究センター(国際農研;JIRCAS)
   The Alliance of Bioversity International and CIAT
開催日    2022年12月12日(月)14:00~16:00
場所    ハイブリッド(場所:ビジョンセンター日比谷、会場人数は登録先着順40名までを予定)
特設サイト https://www.jircas.go.jp/ja/event/2022/e20221212
登録サイト https://www.jircas.go.jp/ja/event/2022/e20221212/entry
備考1 会議進行は英語になります(同時通訳はありません)
備考2 登録の際、会場参加かオンライン参加かをお知らせください。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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