研究職員(若手育成型任期付研究員)募集要領
国立研究開発法人国際農林水産業研究センターでは、標記研究職員の募集を行っております。
任期付研究員の採用は、当センターが推進する研究活動の一層の推進、及び農林水産分野における優秀な研究者の育成を図る観点から実施するもので、今回の採用予定ポストは下記のとおりです。
- 生物資源・利用領域
- 生産環境・畜産領域
- 熱帯・島嶼研究拠点
- 採用候補者の専門性等により採用後決定
微生物機能連携による低環境負荷農業バイオプロセス
- 研究領域
- 生物資源・利用領域(研究員1名)
- 研究業務内容
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気候変動や資源制約の進行により、農業・エネルギー・環境の統合的課題への対応が喫緊の課題となっている。
本研究では、国際農研が強みとする糖化菌およびゲノム解析技術を基盤に、糖化液や発酵ガスを資源とする有用微生物や植物の探索・機能解明を進める。特に、従来分離されていた糖化と物質生産のプロセスを、糖化菌と他の微生物・植物との共培養によって一体化し、液体燃料や有機酸・アルコールなどの高付加価値物質を一貫して生産するプロセスの構築を目指す。その際、微生物間や植物との間に存在する共生・共存・寄生といった代謝的関係性や生態的相互作用を分子・代謝レベルで解明し、それらを活用した持続的かつ制御可能な共培養系の設計が求められる。
また、糖化菌やその培養液が有する植物生育促進および病害抑制作用に着目し、生物的防除資材やバイオスティミュラントとしての機能評価を通じて、化学資材の使用を抑制する低環境負荷農業への応用展開も図る。こうした研究を通じて、国際展開可能なバイオ技術の構築と、農業現場での社会実装を見据えた研究開発を推進する。
- 実施研究課題例
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- 糖化菌と物質生産微生物の代謝共役に基づく共培養プロセスの分子設計と機能評価
- 糖化菌由来代謝物の植物生理作用に関する化合物スクリーニングと作用メカニズムの解明
- 熱帯未利用バイオマスを原料とした糖化・発酵統合系の構築と植物栄養・病害抑制効果の評価
- キーワード
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専門分野:微生物機能、植物・微生物相互作用、微生物代謝工学、バイオスティミュラント、低環境負荷
国際分野:語学力(英語)、国際共同研究を推進するための国際感覚
食品の保全・保蔵技術の研究開発を通じた持続可能な食料バリューチェーンの構築および食品ロス削減
- 研究領域
- 生物資源・利用領域(研究員1名)
- 研究業務内容
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開発途上地域においては、農産物の収穫後処理の不備や過剰生産による価格の暴落が、生産者の経済的安定を脅かす要因となっている。これらの課題に対応するためには、地域に根ざした流通・保蔵・加工技術の確立が不可欠である。特に、各地域に伝わる伝統的な収穫後処理技術の評価・解明・改善を通じて、現地の知見を尊重しつつ、近代技術を適切に導入・現地化することが求められている。
国際農研では、日本が伝統食品産業の近代化を通じて培ってきた技術的優位性を活かし、開発途上地域における食品ロス削減と持続可能な農業社会の実現に向けた研究を推進してきた。今後、これらの研究をさらに発展させるため、国内外の対象地域において食品の保全・保蔵技術の研究開発を担う人材を募集する。
当該研究員には、上記の研究に必要な知識や研究実績に加え、開発途上地域の生産現場への情報提供、実地指導などへの柔軟な対応力が求められる。また、基礎研究にとどまらず、実用化や応用に繋がる開発研究への積極的な姿勢を有することが望ましい。さらに、国内外の共同研究者および研究補助者との協調性を持ち、任期期間を通じて、持続可能な食料システムの実現に貢献する適切なポストハーベスト技術の研究開発の中心的役割を担う人材となることが期待される。
- 実施研究課題例
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- 現地適応型の食品保蔵技術の開発・改善
- 開発途上地域に特徴的な環境における食品流通過程の改善
- 食品ロス削減に向けた現地適応型の利用技術の開発
- キーワード
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専門分野:ポストハーベスト技術、食品科学、食品流通科学
国際分野:語学力(英語)、国際共同研究を推進するための国際感覚
環境調和型畜産業の確立
- 研究領域
- 生産環境・畜産領域(研究員1名)
- 研究業務内容
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畜産は、人間が直接食べない草や作物残渣等を、肉や乳等に変換する技術である。アフリカ・南米及び東南アジアの開発途上国等においては、所得向上に伴い畜産物の需要が高まっており、飼料効率と生産性を改善し、地域内での自給能力を高めることが必要である。一方で、温室効果ガスの濃度上昇に伴う気候変動は顕在化しており、畜産に伴い発生する温室効果ガスの発生抑制は、他の発生源からの発生抑制と同様に必要である。
国際農研では、サブサハラアフリカにおいて地域飼料資源の調整技術、サイレージ等を用いた飼養技術の改善、及び、乳量等における生産性の向上を図ってきた。また、東南アジアにて、カシューナッツ殻液を添加した飼料を利用して反芻家畜から発生するメタンガスの排出を抑制する技術の開発や、家畜ふん尿の適切な管理と利用による温室効果ガス発生抑制、その他畜産に伴い発生する環境負荷抑制技術の開発を行ってきたが、これまでの研究に限定することなく、開発途上地域で環境調和型の畜産研究に取り組んで行く。
そこで本募集課題では、アフリカ・南米および東南アジア等の開発途上国において、地域飼料資源の有効活用等による飼料効率の向上や、栄養改善等による繁殖性の改善等に資する技術開発、ならびに畜産由来環境負荷物質等に配慮した技術開発を行うとともに、現地の行政部局等と連携してその普及を図る。よって、動物栄養学や飼料学に関する専門的な知識を持つことを必須とし、呼気測定試験に関する知識を有していることが望ましい。また、国内外の研究者と協力して共同研究を進められる協調性と高度な国際感覚を持つ人材、さらに、家畜栄養学に捉われず、畜産業が地域環境に及ぼす影響評価等の新たな研究分野にも果断に挑戦できる人材が求められる。
- 実施研究課題例
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- サブサハラアフリカにおける飼料資源の評価、調製・保存技術の開発
- 東南アジアにおける未利用飼料資源を活用した生産性向上及び畜産業由来温室効果ガス排出抑制技術の開発
- 南米における耕畜連携のための畜産技術開発
- キーワード
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専門分野:温室効果ガス排出抑制、地域飼料資源の調整技術、家畜の生産性向上・飼養技術改善、環境影響評価
国際分野:語学力(英語)、国際共同研究を推進するための国際感覚
植物病理学的基礎研究および植物保護技術開発による持続可能な植物病害防除体系の構築
- 研究領域
- 熱帯・島嶼研究拠点(研究員1名)
- 研究業務内容
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毎年、世界の農作物の生産量の約25〜30%が、生育中だけでなく収穫後貯蔵中に発生する病害によって失われている。特に、熱帯・亜熱帯地域における伝染性病害防除体系は不十分であることから、これらの病害による損失が深刻化している。
国際農研では、病原性判別システムの開発、ウイルスフリー苗の生産法の開発と普及、抵抗性遺伝資源や抵抗性遺伝子の選抜技術の開発による抵抗性品種の育成などを通じて、熱帯・亜熱帯地域の病害低減に向けた技術開発と人材育成、技術の普及活動を行ってきた。
一方で、気候変動の激化やグローバルマーケットの拡大により、病害発生地域の変化や非発生地域への急速な伝播が問題となっている。また、環境再生型農業へ注目が集まり、生物多様性への懸念や環境保全への意識の高まりから、農薬や化学肥料の使用削減が、世界各国で求められている。
こうした状況を受け、熱帯・亜熱帯地域で経済栽培される、イネ、サトウキビ、キャッサバ、熱帯果樹、園芸作物等を対象に、植物病原体の諸性状と植物―病原体間相互作用の遺伝・生理・生化学・分子生物学的な解明と、植物疫学的な病気の要因・発生生態・分布・伝染方法などを明らかにする研究分野に取り組む人材を募集する。
上記の研究に必要な知識や研究実績に加え、各作物を担当する研究者とともに、病害の診断、予防・治療による防除や発生予察など、植物防疫に関する研究課題にも取り組み、人為接種・抵抗性評価方法の開発、抵抗性を有する遺伝資源の探索、これらの抵抗性遺伝子の同定を通じ、耐病性品種の開発に資する研究に取り組むことも期待される。
当該研究員には、開発途上地域の生産現場および国際農研の圃場を活用したデータ収集・分析を行うための積極性や、国内外の共同研究者および研究補助者との協調性が求められる。さらにオミックス解析やAIを活用した先端的研究分野にも果敢に挑戦する向上心により、環境負荷の少ない持続可能な農業社会の実現に貢献する総合的な病害防除技術開発の中心的役割を担う人材となることが求められる。
- 実施研究課題例
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- 国際的な農薬使用低減に向けた植物保護技術の現地適応研究
- ゲノム編集によるウイルス病抵抗性作物の作出
- サトウキビにおける病害抵抗性評価手法の確立と抵抗性育種技術の開発
- イネいもち病菌の病原性を明らかにする新たな診断技術の開発と実践的応用
- マンゴー・アボカド・イチゴ等の炭疽病における環境負荷の少ない新たな防除体系の開発
- キーワード
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専門分野:植物病理学、分子生理学、発生予察、病害診断
国際分野:語学力(英語)、国際共同研究を推進するための国際感覚
国際農林水産業
- 研究領域
- 採用候補者の専門性等により採用後決定
- 研究業務内容
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国際農林水産業研究センター(国際農研)は、熱帯農業研究センターとして発足して以来、50余年にわたり熱帯・亜熱帯地域及び開発途上地域における農林水産業技術の向上のための研究開発で我が国の中核的な役割を担ってきた。
第5期中長期目標(令和3~7年度)では、地球規模の食料・環境問題の解決を目指して効果的・集中的な研究開発を行うとともに、関連情報の収集・発信等の機能の強化に取り組むこととしている。近年、開発途上地域の農林水産業を取り巻く環境は激変しており、食料システムの転換、分野横断的な学際的研究開発等、従来の農林水産業研究の枠にこだわらない、柔軟で斬新な発想に基づく革新的な研究開発が求められている。
これまで国際農研では、研究分野を特定した研究職員の募集を行ってきたが、若手研究者の自由な発想を活用するため、広く門戸を開放して、専門分野や研究課題を限定しない若手任期付き研究職員(任期5年、若干名)を募集する。
本研究業務に応募を希望する者は、国際農研が第5期中長期目標期間で実施する業務(研究プロジェクトの一部など、ホームページなどを参照)に対して、自らの専門知識・経験を活かしたどのような貢献ができるかをアピールすることを求める。提案は、国際農研の第5期中長期目標の達成に資するものとするが、現行目標の枠を越えた革新的な技術開発や研究手法が含まれる提案も妨げない。
- 実施研究課題例
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特に示さない。
- キーワード
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専門分野:開発途上地域、地球規模課題、分野横断的、破壊的イノベーション
国際分野:語学力(英語)、国際共同研究を推進するための国際感覚