研究職員(若手育成型任期付研究員)募集

国立研究開発法人国際農林水産業研究センターでは、研究職員(若手育成型任期付研究員)の募集を行っております。

国立研究開発法人国際農林水産業研究センターでは、標記研究職員の募集を行っております。

任期付研究員の採用は、当センターが推進する研究活動の一層の推進、及び農林水産分野における優秀な研究者の育成を図る観点から実施するもので、今回の採用予定ポスト、応募条件、採用試験要領は下記のとおりです。 本募集により採用された任期付研究員については、任期満了の11ヶ月前までに希望者に対してテニュア審査を実施します。この審査に合格した者は任期を定めない研究員として継続採用します。

なお、任期中に出産のための特別休暇の取得、育児休業、介護休業等をしている期間があった場合、当該期間に相当する期間について任期の延長を申し出ることができます。

採用予定の研究領域及び研究業務内容等の詳細は採用情報をご参照ください

採用予定の研究領域及び研究業務内容等

公募番号 研究領域、ポスト、採用予定人数 雇用予定期間 研究業務内容・実施研究課題例・キーワード

1 (情報収集分析)

社会科学領域、1名

令和3年4月1日から5年間

世界の食料・栄養を取り巻く現状は、モノカルチャー的商業農業の発展による主食・油脂作物の大量生産と国際貿易の拡大によって世界的に安価な食料供給が保障されつつある一方で、質の低い食事に由来する微量栄養素の不足、肥満や過体重の蔓延、さらには貧困層に根強く残る食料栄養不足が併存する「栄養の三重苦」という新たな課題が健在化してきている状況にある。また、開発途上国では今後数十年間に人口増・都市化・所得増による食料需要の質・量両面の急速な変化も予測されている。食料の供給面でも、開発途上国には、農業国でありながら長らく生産性の低迷に悩まされ、昨今の気候変動による異常気象により農業生産がさらに不安定化している国も多く、現行の技術体系・生産慣行の継続による農業用地拡大のための土地利用変化や地球規模の気候変動・環境破壊の悪化が懸念されている。

国際農研は、我が国を代表する国際農林水産業分野の研究機関として、国際的な科学的議論を主導し、我が国の食料安全保障と国際社会の繁栄と安定に貢献することを目指しており、研究開発の方向性を示すための情報収集・動向分析活動の強化が求められている。近年、地球規模課題の解決に向けた気運が加速する一方で、たゆまない科学技術の進歩は世界に大変革をもたらし、異分野連携や最先端技術導入の戦略の差が国際競争力を左右する時代になっており、地球・人類双方のために健全なグローバル・フードシステムへの転換を進めるにあたって、社会経済・食料栄養・技術開発をつなぐ包括的な分析が期待されている。

このため、国際農研は、開発途上国を中心に農村社会経済、食料栄養需給、持続的農業技術等に関する情報の収集・分析・提供業務に従事する人材を募集する。農林水産業をめぐる国際的な現状を体系的に分析し、今後の農林水産技術開発の果たすべき役割を考察することができる若手研究者を募集する。本研究者には、農林水産業や地球規模課題に関する基本的知識のほか、経済統計解析、計量経済モデルなどの分析手法の知見と、国内外の研究者と協調して共同研究を進めるための協調性と国際感覚が求められる。

【実施研究課題例】

○開発途上国を中心とした人口動態・気候変動・環境問題等に関する統計・文献の解析
○社会経済・環境のシナリオによる計量モデル等を用いた食料・栄養の動向解析・予測
○各種の技術開発、関連施策導入の経済効果・社会的インパクトの評価

【キーワード】

専門分野:動向分析・シナリオ分析、農業技術評価、グローバル・フードシステム、食料栄養安全保障、気候変動・プラネタリーバウンダリー
国際分野:国際共同研究を推進するための国際感覚、語学力(英語)

2(ダイズ病害抵抗性育種)

生物資源・利用領域、1名

令和3年4月1日から5年間

アフリカをはじめとする開発途上地域では低肥沃度や乾燥、病虫害などの不良環境のために農業生産の潜在能力が十分に発揮できておらず、十分な食料、栄養が確保されていない。この問題の解決に向けて、国際農研では、開発途上地域の農産物の生産性向上と栄養改善に向け、国内外の関係機関と連携した国際共同研究を通じて、不良環境下で農産物を安定的に生産するための農業技術や育種素材、優良品種の開発を行っている。

病害は作物の安定生産の阻害要因で、その中には国境を越えて風媒伝播により広範囲に被害をもたらすものがあり、一国の防除対応だけでは不十分である。そのため、これまでに対象地域における国際研究ネットワークを利用しながら周辺国とも連携して、発生生態解明に基づく防除技術や侵入・拡大抑制技術の開発、病害抵抗性遺伝子の同定、抵抗性評価法の開発、抵抗性育種素材と品種の開発、病原菌の多様性解析等を行ってきた。

そこで、これまで構築してきた国際研究ネットワークを利用して、新規抵抗性遺伝子の導入やそれらの集積などの手法により、南米、アジア、アフリカ向けダイズ病害抵抗性品種の開発に取り組む若手研究者を募集する。本研究者には、遺伝・育種学と分子遺伝学の専門的な知識をベースに植物病理の研究分野と連携しつつ、ダイズ品種に求められる幅広い農業特性を評価しながら品種の選抜・育成を遂行する総合力が求められる。また、共同研究機関と一緒に交配・選抜から品種化まで、できれば社会実装の初期の段階までを一貫して遂行することを期待する。

【実施研究課題例】

〇ダイズさび病に高度に抵抗性を持った大豆品種の育成
〇さび病と紫斑病の複合抵抗性ダイズ品種の開発に向けた病害抵抗性育種素材の開発

【キーワード】

専門分野:ダイズ、遺伝育種、分子遺伝、植物病理、品種育成
国際分野:海外研究機関との共同研究実績、国際会議等で議論できるレベルでの英語力、日常会話が出来る程度のスペイン語ができることが望ましい。

4(家畜飼料資源)

生産環境・畜産領域、1名

令和3年4月1日から5年間

アフリカ及び東南アジアの開発途上国等においては、近年、所得向上に伴い畜産物の需要が高まっており、飼料効率と生産性を改善し、地域内での自給能力を高めることが必要である。そして生産性や生活の質の向上のためには、未利用もしくは低利用の地域飼料資源の栄養価を保存するとともに有効に利用する方法の開発が求められている。また、反芻動物の反芻胃や排泄物は、温室効果ガスであるメタンや一酸化二窒素の排出源であることから、畜産由来の環境負荷を低減することが必要である。

国際農研ではこれまで、サブサハラアフリカにおいて地域飼料資源の調整技術、サイレージ等を用いた飼養技術の改善、及び、乳量等における生産性の向上を図ってきた。また、東南アジアにおいて、地域飼料資源を活用した生産性向上、及び、温室効果ガス排出の削減に向けた技術開発を行ってきており、ヘッドボックス型のメタン排出測定チャンバー等を現地に導入している。

そこで、両地域において、地域飼料資源の栄養価を評価し、その有効活用等による飼料効率や生産性の向上、並びに、温室効果ガス排出抑制等の環境に配慮した技術開発を行い、現地の行政部局等と連携してその普及に取り組む若手研究者を募集する。本研究者は、家畜栄養学や飼料学に関する専門的な知識を持つことを必須とし、呼気測定試験に関する知識を有していることが望ましい。また、国内外の研究者と協⼒して共同研究を進められる協調性と高度な国際感覚を持つ人材、さらに、家畜栄養学等に捉われず、畜産業が地域環境に及ぼす影響評価等の新たな研究分野にも果断に挑戦できる人材となることが期待される。

【実施研究課題例】

〇サブサハラアフリカにおける飼料資源の評価、調製・保存技術の開発
〇東南アジアにおける未利用飼料資源を活用した生産性向上及び畜産業由来温室効果ガス排出抑制技術の開発

【キーワード】

専門分野:飼料調製・保存、生産性の向上、温室効果ガス排出抑制、環境影響評価
国際分野:国際共同研究を推進するための国際感覚、語学力(英語)、海外での研究経験があることが望ましい。

5(木材組織・材質分析)

林業領域、1名

令和3年4月1日から5年間

前世紀以来、熱帯の天然林資源は重要な輸出品目となる一方で減少の一途をたどってきた。多様な特性を持つ良質な熱帯木材の供給を持続可能なものとし、熱帯林地域住民の生計と地域経済および気候変動の緩和を含む生態系サービスを向上させることが求められている。このためには、陸上生態系で最も生物多様性の豊富な熱帯林において多様な林業樹種の特性評価や環境適応能力の評価を行い、今後の環境変化予測のもとに、最適な樹種、系統ないしクローンを選択し、植栽することが求められる。特に巨大な個体サイズを有する樹木の幹は、林業において収穫物となると同時に、生命活動に不可欠な水利用において、土壌から生命活動が最も盛んな林冠に水を受け渡す役割を果たしており、木材組織形態の評価は樹木の水利用効率を評価する上でも重要な形質となっている。

国際農研ではこれまでマレーシア、インドネシア、タイなど、東南アジアを中心にチークやフタバガキなど熱帯林の固有遺伝資源について、環境適応性に基づいた林業生産力の強化を目標として、その成長や繁殖特性に影響をする環境因子の同定や、成長や環境適応能力を増強するためのゲノム選抜モデルの開発に取り組んでいる。

そこで、この研究をさらに発展させるために、木材組織の形態学的特性解析を行い、樹種間、産地間などの表現型変異を明らかにするとともに、これら形態変異の生理学的特性の解明に取り組む若手研究者を募集する。本研究者には、熱帯林を有する海外の研究機関、大学、行政機関などと協力して、現地の森林や木材試料の調査分析を行い、共同で研究成果を発表していくことが求められる。また、自ら多様な特性を持つ熱帯林業樹種の木材組織や材質に関する新たな研究を切り開くとともに、国内外の関連分野の研究者との連携によって、その成果を材質や成長の優れた育種素材の選抜、あるいは樹種の特性に基づく植林技術の開発などに結びつけて、生態系を保全しながら木材生産量とその安定性および品質を向上させる研究の発展に貢献することを期待している。

【実施研究課題例】

〇熱帯林業樹種の木材組織・材質の樹種間・産地間変異の解明
〇環境ストレス等が熱帯林業樹種の材形成にあたえる影響の解明
〇木材解剖学的に見た熱帯樹木の環境適応機構の解明
〇木材材質形質の大量迅速フェノタイピング技術の開発

【キーワード】

専門分野:木材組織、材質評価、木材解剖学、熱帯林業、環境適応
国際分野:国際共同研究を推進するための国際感覚、語学力(英語)、海外での研究経験があることが望ましい。

6(イネ育種・育種素材開発)

熱帯・島嶼研究拠点、1名

令和3年4月1日から5年間

アジア地域を中心とする稲作は、近年アフリカ地域にも広がり、十分な灌漑や治水施設が施されていない陸稲、天水田、あるいは低湿地や洪水氾濫地帯などの新たな栽培地への拡大が進行し、それらの地域の環境に適応した品種育成が求められている。一方、地球温暖化に伴う気候変動により水害、干ばつ、極端な高低温に対する耐性や、塩害や低肥沃地等不良環境への適応、いもち病、ウンカ等の病虫害抵抗性の付与も重要となる。さらには、食文化の多様化に伴う香り米や食味に対する嗜好性など市場性を考慮した品種の育成など、多角的な育種戦略を早急に検討することが求められている。

国際農研ではこれまで多様なイネ遺伝資源を収集し、各国研究者とともに、上記育種目標を達成する品種・系統の育成を行ってきた。特に熱帯・島嶼研究拠点においては、亜熱帯気候条件を生かし、インド型イネ品種・系統の形質調査や年2回栽培による世代促進等を通じて、日本で唯一のインド型イネ研究拠点として各国研究者との国際共同研究を通してこれら遺伝資源を活用し、熱帯の開発途上地域に適応した育種素材の開発を行ってきた。

そこで、熱帯・島嶼研究拠点をベースとして、開発途上国のニーズに対応した育種戦略を立案し、多様な遺伝資源や育種素材から有用形質の遺伝的変異を解明し、有用遺伝子を効率的かつ正確に同定・選抜する手法を開発するとともに、それらの手法を開発途上国の研究者と共有し、農業生産の基盤を支える品種育成に取り組む若手研究者を募集する。本研究者には、画像解析や環境センシング等近年目覚ましい発展を遂げつつある迅速診断技術を積極果敢に取り入れ、新しい評価手法を開発するとともに、ビッグデータ解析による生育予測・病気の発生予察など、イネ育種・育種素材の開発に資する研究分野に挑戦する資質を持つことが期待される。また、これらの研究を国内外の研究者と協調して共同研究を進められる協調性と国際感覚を有することが期待される。

【実施研究課題例】

〇イネ遺伝資源、育種素材の生理・形態形質変異と遺伝的要因の解明
〇非生物および生物ストレス抵抗性を複合的に集積した育種素材の開発
〇画像解析や環境センシングを活用したデジタル農業診断技術の開発

【キーワード】

専門分野:イネ、遺伝資源、遺伝育種学、植物病理学、迅速診断技術、ビッグデータ解析
国際分野:国際共同研究を推進するための国際感覚、語学力(英語)、国際共同研究に参画経験があることが望ましい。

7 (物質循環・窒素動態) 熱帯・島嶼研究拠点、1名 令和3年4月1日から5年間

世界の作物生産は窒素肥料に大きく依存しているにも関わらず、作物が吸収する窒素量は投入量の3~5割に留まっている。吸収されなかった余剰の窒素は環境に放出され、水圏生態系を汚染するとともに、温室効果ガスとなり気候変動の一要因となっている。小島嶼は陸地面積が小さく、四方を海で囲まれていることから、気候変動や人間活動の影響を受けやすく、生態系は非常に脆弱である。窒素肥料など農業資材や食料の島外からの大量の交易品の流入が島嶼内の窒素収支バランスを悪化させ、貴重な生態系や住民の健康に甚大な影響を及ぼしている。

国際農研ではこれまで、パラオやフィリピン等のアジア・太平洋島嶼地域において、持続安定した農・林・水産業生産と環境、生態系保全が両立する資源管理システムの開発に取り組んできた。特に熱帯・島嶼研究拠点では、亜熱帯島嶼環境条件やライシメーター等の施設を活用し、河川への土砂、栄養塩の流出を防止する作物の栽培技術の開発や、農業由来の窒素等栄養塩の地下流出を軽減し、作物の持続的な生産を可能にする肥培管理法の開発に取り組んできた。

そこで、山・里・海が密に連関する熱帯小島嶼地域において、農業生態系内の窒素動態を解析、窒素フローをモデル化し、窒素負荷を軽減する農業技術の開発に貢献する若手研究者を募集する。本研究者は、熱帯・島嶼研究拠点をベースとして、窒素動態の解明に向け、最新技術を用いた環境試料の定性・定量分析を行う他、農業資材の投入に係る現地調査等を行う。また本研究者には、国内外の様々な分野の研究者と協力して研究を進める協調性と国際感覚を有することが求められる。加えて、行政、民間企業、農家、地域住民など様々なステークホルダーと円滑かつ良好に意見交換、研究交流できる資質が期待される。

【実施研究課題例】

〇耕地、流域、島嶼の各レベルにおける窒素フローの解析とモデル化
〇耕地生態系における適切な窒素管理方策の検討
〇島嶼における窒素負荷軽減技術の検証

【キーワード】

専門分野:物質循環、窒素動態、環境計測
国際分野:国際共同研究を推進するための国際感覚、語学力(英語)、海外での研究経験があることが望ましい。

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