国立研究開発法人国際農林水産業研究センターでは、標記研究職員の募集を行っております。
任期付研究員の採用は、当センターが推進する研究活動の一層の推進、及び農林水産分野における優秀な研究者の育成を図る観点から実施するもので、今回の採用予定ポスト、応募条件、採用試験要領は下記のとおりです。 本募集により採用された任期付研究員については、任期満了の11ヶ月前までに希望者に対してテニュア審査を実施します。この審査に合格した者は任期を定めない研究員として継続採用します。
なお、任期中に出産のための特別休暇の取得、育児休業、介護休業等をしている期間があった場合、当該期間に相当する期間について任期の延長を申し出ることができます。
採用予定の研究領域及び研究業務内容等
公募番号 | 研究領域、ポスト、採用予定人数 | 雇用予定期間 | 研究業務内容・実施研究課題例・キーワード |
令和2年10月1日から5年間 |
生体情報計測(Phenotyping)・診断は、育種や栽培現場において最も重要なことである。育種ニーズの多様化やIT技術の高度化に伴い、Phenotypingを効率的、あるいはこれまでと違った視点でより正確に評価する手法の開発が求められる。近年、遺伝的特徴(=ゲノム情報)に関する解析手法の発展に伴い、大規模な遺伝情報を低コストで手にすることができるようになった。そのため、Phenotypingによって得られた生理的・形態的特徴をゲノム情報に関連付けて選抜することによって、より効率的な育種が可能となる。またPhenotypingを非破壊で行うことにより、効率的な栽培管理や作物モデルと連携した収量予測等が可能となる。 国際農研ではこれまでに、開発途上地域の国立農業研究機関などとの国際共同研究等を通してイネ、熱帯果樹やサトウキビ等の遺伝資源を導入し、国内外研究者とともに育種素材の開発を行ってきた。さらに、遺伝資源の生理・形態学的特徴づけを迅速に行い、遺伝的多様性や遺伝様式を明らかにするとともに、特徴づけの結果を栽培管理や環境制御に役立ことが必要である。また、これらの成果を開発途上地域における育種や栽培管理技術の開発に結びつけることが必要である。 そこで、国際農研が保有する遺伝資源の有用形質を開発途上国の育種や栽培現場に利用できるようにするため、1)機械学習を活用して様々な特徴量の抽出および効率的な形質調査・生体情報計測技術の開発、2)開発途上国での利用を想定したアプリや簡易診断手法の開発、に取り組む若手研究者を募集する。本研究者には、特定の手法に縛られず幅広い機械学習手法を駆使することで、様々な作物の研究開発に柔軟に取り組み、国内外の研究者と協調して共同研究を進めるための協調性と国際感覚を持つことが求められる。また、育種、栽培学研究の経験の有無を問わず、新たな研究対象に果断に挑戦することを期待する。 【実施研究課題例】 ○環境制御温室におけるトマト・イチゴ等の継時的非破壊生育調査・形態測定法の開発 【キーワード】 専門分野:画像解析、機械学習、遺伝資源、形質評価、非破壊測定、データベース |
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令和2年10月1日から5年間 |
開発途上地域の農家は、元来脆弱な社会経済条件の下で、グローバル経済の浸透による輸入資材や輸出用農産物の価格変動、気候変動による生産の制約、さらには疫病等による需要の急減など様々なリスクにさらされている。このような不安定な経営環境の克服と安定的な所得向上を目指して様々な技術開発や制度改善が求められており、国際農研ではこれまで、不良環境に適応した品種や病害抵抗性を持つ品種の開発、施肥効率を向上させる農法、土壌浸食を防ぐ生産技術など様々な現場技術を開発してきている。 しかし、これらの技術が実際に社会に実装され、社会経済的な効果を発揮し、さらには地域社会でのイノベーション創出に結びつくためには、多くの条件が存在している。これらの条件を解明し、開発技術の有用性と社会経済的な効果を示すためには、現地の農家や関係する様々なステークホルダーを対象にした調査で収集したデータをもとに、収量や所得の増加、価格変動の減少、さらには栄養状態の改善などの直接的な効果を客観的な指標で把握し、明確に示す必要がある。また、これら技術の採用に伴う、地域社会での受容性、持続性、発展性などの広範な要因も分析する必要がある。 今後国際農研で開発される新たな技術の効果を現地の視点で評価するためには、例えば、1) 新技術導入の効果評価に賛同する村落のベースライン調査、2) 対照農家群の設定と技術導入、3) 技術導入の有無別の数理計画法、回帰分析などでの評価、などの実験的手法も想定される。本募集では、上記のような、技術の有用性の定量的把握や評価を実施できる若手研究者を募集する。本研究者には、特定の手法に縛られず、幅広い計量分析手法を駆使することで、新たに開発される様々な技術の評価に取り組み、国内外の研究者と協力して共同研究を進めるための協調性と国際感覚が求められる。 【実施研究課題例】 〇アフリカ地域において開発される土壌保全技術の経営的評価 【キーワード】 専門分野:技術評価、数理計画法、回帰分析法、農村調査、技術の社会受容性 |
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令和2年10月1日から5年間 |
「水」の確保は、農業を行う上で最も重要なことの一つである。 近年の気候変動に伴い頻発する洪水や干ばつにより土地の劣化が進み、食料安全保障に影響を与えており、これに対応するため、持続可能な土地管理を進め、砂漠化などの土地の劣化を防ぎながら、食料安全保障を強化することの重要性が指摘されている。 開発途上地域では、その地域の自然条件に応じた営農、水利用が行われているが、今後、気候変動に伴い、洪水や干ばつといった極端現象は増加することが予測されており、それに対応した営農や水資源の利用が求められている。そのために、現地での計測に基づく水文、水環境条件の把握と現状の営農体系を評価した上で、モデルを用いた将来予測を行い、予想される水文、水環境の変化に適応した対策を現地政府や農業者に提案する必要がある。 そこで、これまで国際農研が行ってきた気候変動対応の技術を踏まえ、1)現地機関と共同でICT等を駆使した計測に基づく水資源利用の現状把握と営農体系の評価を行い、2)将来の気候変動の影響を考慮したモデルによる将来予測を行った上で、3)水文、水環境の変化に対応した水資源計画等対策の検討に取り組む若手研究者を募集する。本研究者には、これらの基礎的・基盤的な研究を行い、その成果を開発途上地域の現場へ応用するため、現場に滞在しての調査に前向きに取り組み、かつ国内外の研究者と協力して共同研究が進められるような協調性や優れた国際感覚を持つことが求められる。また、水文・水資源学研究の経験を有しつつ、新たな研究対象に果断に挑戦することを期待する。 【実施研究課題例】 〇モンスーンアジア地域等における水資源利用の現状把握および水利用効率に着目した灌漑システムと営農体系の評価 【キーワード】 専門分野:水文学、ICT、水環境、水管理、水利用計画 |
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令和2年10月1日から5年間 |
温室効果ガスの濃度上昇による気候変動を緩和するために、土壌炭素隔離は有望な技術として期待されている。熱帯には作物残渣等廉価な有機物が多量に存在するが、熱帯土壌は地温が高く有機物分解速度が速いため、土壌炭素濃度は温帯よりも低いことが多い。炭素隔離の効率を高め、熱帯耕地における土壌有機物を増加させることは、気候変動等に対する作物の安定生産にも繋がる。 国際農研ではこれまで、タイ国において有機物長期連用試験を40年間以上継続しており、作物残渣及びたい肥等の農地施用が熱帯耕地土壌中の有機炭素量に及ぼす長期的な影響を評価する上で非常に有用なデータを蓄積してきた。我々の研究データ等によると、熱帯農耕地土壌へ作物残渣等を連用するだけは土壌炭素の蓄積効果は必ずしも高くない。これらを踏まえ、熱帯耕地土壌における炭素隔離効果を促進する技術開発が求められている。 そこで、熱帯農耕地の炭素隔離を促進する技術や土壌の生産性(肥沃度)を向上させるための技術開発を行う。火山灰との併用や、バイオチャー化等により、土壌中の有機物分解を遅らせ、有機物施用による炭素貯留効果を高め、かつコストを低減する技術開発を行い、その長期的な効果をモデル等により予測・評価する研究を行う。また、炭素にとどまらず、窒素等その他の養分、土壌の物理性等も含めて熱帯農耕地の土壌生産性(肥沃度)を向上させるための技術開発・研究を行う。これらの研究に取り組む若手研究者を募集する。これら様々な研究開発に柔軟に取り組む能力を有し、国内外の研究者と協力して共同研究を進められる協調性と国際感覚を持つとともに、土壌学の知識を有しつつも土壌学にとらわれず、新たな研究対象に果断に挑戦できる人材を求める。 【実施研究課題例】 〇粘土鉱物との併用、不耕起栽培などを始めとする、熱帯耕地土壌中で有機物を分解しにくく安定化する技術の開発 【キーワード】 専門分野:土壌分析、炭化、土壌肥沃度管理 |
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令和2年10月1日から5年間 |
内陸開発途上地域は、国土が海から隔絶され、地勢的に不利な状況(高い通過輸送コストなど)にあるため、貧困からなかなか抜け出せない現状がある。このような内陸地域は、農業生産に依存する割合が高いにも関わらず、作物生産性や安定性に問題があることが多い。その理由として、①これらの地域で栽培されている雑穀類などは、主要作物より複雑なゲノム構成を持つなど育種改良が容易でないこと、②気候変動による影響を最も受けやすい干ばつや塩害などの不良環境地が多いこと、が挙げられる。一方で、地域固有の環境に適応した遺伝資源を有していることが多く、世界の食料・栄養安全保障への貢献が期待される貴重な遺伝資源の保全が喫緊の課題となっている。 国際農研ではこれまで、国際共同研究等を通して、開発途上地域の不良環境における作物生産の安定化を目指して、分子育種技術や育種素材の開発を行ってきた。今後は、ダイズやイネなどの主要作物のみならず、内陸地域などに特有の多様な環境に適応している遺伝資源を保全しながら、その地域に根ざした作物の環境適応機構を解明する必要がある。また、この基盤的知見をもとに、世界の食料・栄養安全保障や対象地域での活用を念頭に、高い不良環境耐性を持ち、栄養価にも優れた高付加価値育種素材を開発していく必要がある。 そこで、国際農研における不良環境耐性作物開発研究の一環として、次世代シークエンサーをベースにしたバイオインフォマティクス解析、土壌からの栄養素の吸収や移行・食物としての栄養を連関して解析するHPLC・ICP分析、種々の表現型解析、遺伝子解析などの手法を用いて、内陸地域に特有の厳しい環境条件に適応する孤児(低利用)作物などの分子機構の理解を通して、不良環境耐性・高栄養価作物の開発に向けた基盤研究に取り組む若手研究者を募集する。本研究者には、栽培・作物学や社会科学なども含めた分野横断的な連携研究のもと、様々な作物の研究開発に意欲的に取り組み、国内外の研究者と協力して共同研究を進めるために必要な協調性と国際感覚を持つことが求められる。 【実施研究課題例】 〇内陸開発途上地域(ネパール、ボリビアなど)の不良環境に適応する孤児作物等の不良環境耐性・高栄養価付与に向けた遺伝子・分子素材の探索 【キーワード】 専門分野:バイオインフォマティクス、孤児作物、植物分子生物学、不良環境耐性、高栄養価、遺伝資源 |