令和元年11月26日、地球規模課題を解決するSDGs への貢献という視点から、植物の越境性病害虫に関連する分野の最前線で活躍する専門家・研究者の講演、討議を通じて、今後の有効な国際研究協力のあり方を探るために、JIRCAS国際シンポジウム2019「植物の越境性病害虫に立ち向かう国際研究協力〜SDGs への貢献」が開催されました。
シンポジウムではまず、主催者代表の岩永 勝 国際農研 理事長が開会の挨拶を行い、今回のシンポジウムの目的と意義を述べました。続いて農林水産技術会議事務局の島田 和彦研究総務官から歓迎の挨拶をいただきました。
基調講演では、国際植物防疫条約 (IPPC) のJingyuan Xia事務局長から「越境性植物病害虫との戦いに関する最近の課題と病害虫に対処する農民を支援するFAOの戦略」、ついでCABIのUlrich Kuhlmann事務局長から「越境性植物病害虫管理に関するCABIの経験:植物の健康システムの強化と助言の重要性」の演題で御講演をいただきました。
続くセッション1では「越境性重要害虫」というテーマのもと、農研機構 農業技術革新工学研究センターの大塚 彰博士、農研機構 九州沖縄農業研究センターの真田 幸代博士、国際農研の松川 みずき博士、国際トウモロコシ・コムギ改良センターのFrédéric Baudron博士から、移動性害虫ツマジロクサヨトウの飛来解析と発生予察、アジアの重要越境性害虫イネウンカ類の殺虫剤利用技術の開発、アフリカの小規模農家のトウモロコシ畑におけるツマジロクサヨトウによるダメージと収量への影響について、興味深い発表をいただきました。
セッション2では、「越境性重要病害と検疫」というテーマで、国際農研の福田 善通博士、ブラジル農牧研究公社大豆研究センターのClaudia Godoy博士、農林水産省 大臣官房国際部、前横浜植物防疫所の横井 幸生博士から、イネいもち病の国際ネットワーク研究、ブラジルでの経験からダイズさび病の侵入と対処法、そして植物防疫とリスク管理が紹介されました。
続くパネル・ディスカッションでは、講演者のうち6名にパネリストとして登壇していただき、SDGs への貢献という視点から、植物越境性病害虫の問題に対処するための今後の有効な国際研究協力のあり方について意見交換が行われました。世界的に問題になっているツマジロクサヨトウの対策に向けたエリアごとの連携の必要性、開発途上地域のキャパシティービルディング、国を越えた情報共有の必要性、注意喚起・モニタリング・診断・防除・イノベーションにおける行政・研究の連携、SNSなど新たなアプローチの利用など、研究機関の連携だけでなく、農家、普及機関、行政も含めて、国内あるいは国外との連携が必要であることが確認されました。
最後に、植物越境性病害虫の問題に立ち向かうためには、情報の共有、開発途上地域も含んだ国際研究協力、FAO、IPPC、CGIARセンターなどの国際機関との連携を強める必要があるとのメッセージを込めた国際農研の小山修理事の挨拶により、シンポジウムは閉会しました。
なお、JIRCAS国際シンポジウム2019は農研機構との共催であり、農林水産省、日本植物病理学会、日本応用動物昆虫学会、国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所、持続的開発のための農林水産国際研究フォーラム(J-FARD)の後援のもとで開催されました。