国際農研はタイ王室森林局(Royal Forest Department、以下RFD)林業研究開発部と協力して、チークなどの有用な樹種の造林に関連する研究を行ってきました。砂質土壌が多くチークが育ちにくいタイ東北部で、土壌を改良してチーク苗木の生存率を高め成長を増進する研究も行っています。この研究成果を、タイの全国各地で造林に適した苗木の開発にあたるRFD技官に知ってもらうために、平成30年2月6日、タイ東北部のコンケン市でナレッジトランスファーセミナーを開催しました。
セミナーの講師はこの研究を担当した香山雅純主任研究員(現・(国研)森林総合研究所 主任研究員)が務めました。受講者はタイ東北地方の各地に展開するRFDの造林研究センター及び造林研究ステーションの19名、その他日本・タイ双方の関係者を含め、総勢33名が参加しました。
このセミナーでは、研究成果だけでなく、樹木生理学に基づくチーク育苗技術開発の手法を伝え、業務上の問題解決のヒントとなるよう、講義と計測手法の実習を行いました。講義では、まず、タイ東北部では気候が同じでもチーク苗木の成長が大きく異なり、その主な原因は土壌の性質の違いであることを指摘しました。特にタイ東北部で広く分布する砂質土壌は、水分および養分の保持能力が低いことを紹介しました。そして、様々な資材を用いた土壌改良の苗木成長への効果を科学的に計測する手法として、土壌水分含量、葉の水ポテンシャル、クロロフィル濃度などの計測手法を紹介しました。最後に、砂質土壌に炭やベントナイトなどの資材を混ぜるとチーク苗木の生存率が上がり成長が増進されるという研究成果を紹介しました。実習では、チーク苗木から葉を採取して水ポテンシャルを計測する手法などを紹介しました。
セミナー後、受講者からは、「基本的知識の取得に役立った」、「異なる樹種の苗木生産にもこのような視点が重要」、「病理学の課題についてこの知識を生かしたい」などの声が得られました。
今後も、国際農研とRFDとの共同研究を通して得られた知見や成果の中からテーマを選び、ナレッジトランスファーセミナーを開催していく予定です。