「タイにおける持続的林業振興のための森林資源の利活用技術の高度化に関するワークショップ」開催報告

JIRCASがタイとマレーシアで実施している共同研究プロジェクト「東南アジアにおける持続的利用を通じた森林管理・保全技術開発」(持続的林業)のうちタイ王室森林局と実施しているプロジェクト研究課題「森林が提供する多様な生態資源活用技術の高度化」が、研究成果の発表ならびに普及広報を目的に開催されました。

プロジェクト名

東南アジアにおける持続的利用を通じた森林管理・保全技術開発(持続的林業)

1.会議・シンポジウム名

Workshop on Improvement of Utilization Techniques of Forest Resources to Promote Sustainable Forestry in Thailand(タイにおける持続的林業振興のための森林資源の利活用技術の高度化に関するワークショップ)

2.開催日時

 平成27年12月15日 8:00~17:00

3.会場(開催国・開催年)

 Maruay Garden Hotel(バンコク市、タイ国)

4.主催・後援等

 主催:国立研究開発法人国際農林水産業研究センター(JIRCAS)
 共催:タイ国天然資源環境省王室森林局(RFD)     

5.会議概要

JIRCASがタイとマレーシアで実施している共同研究プロジェクト「東南アジアにおける持続的利用を通じた森林管理・保全技術開発」(持続的林業)のうちタイ王室森林局(Royal Forest Department, RFD)と実施しているプロジェクト研究課題「森林が提供する多様な生態資源活用技術の高度化」に関して、研究成果の発表ならびに普及広報を目的に開催されました。
 ワークショップの参集範囲は、タイ王室森林局から副長官をはじめ林業研究開発部の研究科と研究普及科、植林振興部民有林行政官ならびに出先部署技術普及行政官、タイ国内の他機関からはタイ林業公社、農業協同組合省土地開発局、そして日本からは(研)森林総合研究所、(公財)国際緑化推進センター、JIRCASの参加者を含めて総勢40名余りでした。
 副長官による開会挨拶では、政府が地域住民の生計向上を図るうえで有用郷土樹種チークの活用が欠かせないもので、チーク人工林経営の可能性をRFD-JIRCASプロジェクトが、これまで注目されていなかった東北タイにまで着実に広げつつあることが好評されました。そしてRFDはチーク人工林経営の普及に向けて法規制の見直しとEU等への合法材製品輸出の拡大に向けて検討を重ねていることも紹介されました。
 基調講演として梶本卓也氏 (森林総研植物生態研究領域長)から、人工林の持続的経営の現状と課題について南米などの熱帯地域と日本の事例をもとに、炭素吸収能向上や材の品質向上をはじめ複層林、アグロフォレストリーなど、リスク分散につながる複数の選択肢を設けておくことが肝要なことが紹介されました。引き続いて研究成果の講演が10件行われ、セッション1ではコスト低減と生産性向上のための育林技術に関して、林分成長に与える立地環境要因、低適性土壌改良資材、林分成長を促進する間伐強度、低コスト更新になる萌芽木の成長動態を、セッション2では森林資源の内容評価と管理に関して、チーク人工林の炭素吸収能力評価ならびに人工林蓄積量の広域推定モデル、二次林の林産物供給量に関して報告されました。
 総合討論では、チーク人工林経営の促進につながる低コスト化技術として有望な萌芽更新技術とチーク材家具など製品の消費者選好に関する分析結果について、特に参加者の関心も高く今後の利用・応用に向けた質疑も行なわれました。
 会場では、参加者に分かり易く伝えるためにポスターが展示され解説の機会が設けられたほか、2つの県域版だけだったチーク植栽適地図もRFDによる拡張作業を通じて東北タイ6県分の冊子版が刊行され希望者に配布されました。合わせて、現場から要望の高かったそれらのスマートフォン版が紹介され、今後提供方法の検討を経て配布されることも報告されました。

6.会議の様子

講演者および参加者

関連するページ