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1468. 不確実性の時代における情報収集分析提供の役割

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1468. 不確実性の時代における情報収集分析の役割

 

本日4月1日より、国際農研の第6期中長期目標期間(7年間)がスタートしました。この新たな期間の幕開けは、これまで以上に複雑で不確実性の高い国際環境の中で迎えることとなります。

 

この数年で何が変わったのか
 振り返れば、この直近数年間は、世界の食料システムにとって大きな転換点となる時期でした。
 4年前の2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、地政学的な緊張が一気に高まり、国際市場の混乱が拡大しました。これにより、食料および肥料価格は歴史的な高水準に達しました。
 さらに気候面でも、世界は大きな変化に直面しています。エルニーニョ現象の影響も重なり、2024年には世界平均気温が観測史上最高を更新し、一時的とはいえパリ協定で掲げられていた1.5℃目標を超過する状況となりました。
 政治・経済の面でも変化は顕著です。米国では政権交代に伴い、USAIDの閉鎖や関税政策の強化など、これまでのグローバル化の流れに逆行する動きが強まりました。
 一方、日本国内でも、「令和の米騒動」と呼ばれる状況が生じました。急速な円安により輸入食料価格は上昇し、エンゲル係数は44年ぶりの高水準になるなど、食料問題は国内政治においても重要なテーマとなっています。

 

現在進行する新たな危機 
 こうした状況の中で、現在、新たな緊張が世界の食料安全保障を揺るがしています。
 中東での紛争の激化について、アントニオ・グテーレス国連事務総長は国連安全保障理事会に対し、「誰も制御できない連鎖的事態を引き起こす危険性」があると警告しました。とりわけ深刻なのは、ホルムズ海峡をめぐる状況です。ここでの海上輸送の停滞は、石油・ガスだけでなく、肥料の流通にも重大な影響を及ぼしています。国連食糧農業機関(FAO)によれば、タンカーの航行量は90%以上減少し、農業生産および世界の食料安全保障に深刻な影響が出ています。また、国連人道問題調整事務所(OCHA)は、今回の危機がCOVID-19やウクライナ危機以降で最も深刻な人道支援サプライチェーンの混乱を引き起こしていると指摘しています。人道支援物資の供給ルートは大きく損なわれ、数百万人規模で食料・医療・緊急支援へのアクセスが脅かされています。

 

国際的対応と不確実性
 こうした事態に対し、国連は、和平努力を主導する特使の任命に加え、ホルムズ海峡に関する専門タスクフォースの設立を発表しました。この枠組みは、肥料や関連資材を含む重要物資の安全な輸送確保を目的としています。これは、過去の黒海穀物イニシアチブなどの経験を踏まえた取り組みですが、現状では紛争終結の見通しは立っておらず、世界市場の不透明感は続いています。

 

求められる視点
 地政学リスクの高まり、気候変動の加速、グローバル化の揺らぎ、サプライチェーンの脆弱性が同時進行する中で、世界の食料システムはこれまでにない複合的なリスクに直面しています。特に、グローバルサウスを中心とする地域では、肥料供給の停滞がそのまま収量低下と食料不足に直結するため、影響はより深刻です。
 不確実性が常態となった現在、国際農業研究の役割は単なる技術開発にとどまりません。世界の変化を的確に捉え、戦略的に対応していくための情報収集・分析・提供の役割が一層求められています。この7年間を通じて、グローバルサウスをはじめとする世界の食料問題に対し、より実効性のある貢献を目指していきます。

 Pick Upに関しては、更新が若干不定期となる可能性もありますが、引き続き、地球環境や食料問題に関する時事的なテーマについて、国内外の資料を紹介していく予定です。また、熱帯・亜熱帯地域を研究対象とする国際農研研究者による現場の声を届ける方法も模索していきます。今後ともご関心をお寄せいただければ幸いです。

 

(文責:戦略統括室 飯山みゆき)
 

 

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