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1394. 世界土壌デー2025
1394. 世界土壌デー2025
「世界土壌デー(World Soil Day)」は、健康な土壌の重要性から、土壌資源の持続的管理を提唱する場として、毎年12月5日に開催されています。2025年世界土壌デーは、「健全な都市のための健全な土壌」というテーマで、都市景観に焦点を当てています。アスファルト、建物、道路の下には土壌があり、透水性があり植生が生い茂っている場合、雨水を吸収し、気温を調節し、炭素を貯蔵し、空気の質を改善するのに役立ちます。しかし、セメントで固められるとこれらの機能が失われ、都市は洪水、過熱、そして汚染に対してより脆弱になります。政策立案者から市民まで、すべての人が都市空間を根本から再考し、より環境に優しく、より回復力があり、より健康的な都市を構築する必要があります。
一方、都市部および農村部合わせ、世界人口に食料を供給するには、土地・土壌・水の健全な管理が必要になります。国連食糧農業機関(FAO)が最近発表した報告書(The State of the World’s Land and Water Resources for Food and Agriculture 2025: SOLAW 2025)は、食料生産の持続的な増加を支える土地と水資源の大きな潜在能力を強調しています。
報告書によると、2024年には推定6億7,300万人が飢餓を経験し、多くの地域が深刻かつ頻発する食料危機に依然として直面しています。 2050年までに世界人口が97億人に近づくにつれ、こうした圧力はさらに強まり、農業は2012年比で食料、飼料、繊維の生産量を50%増加させ、淡水も25%増加させる必要に迫られています。
過去60年間、世界の農業生産量は3倍に増加しましたが、農地はわずか8%しか増加していません。しかし、その一方で、環境と社会へのコストは高くなっています。FAOのデータによると、今日、人為的な土地劣化の60%以上が農地で発生しています。森林伐採や脆弱な生態系の改変は、農業そのものが依存している重要な生物多様性と生態系機能を損なうことになります。
報告書は、世界人口がピークを迎えると予想される2085年までに、世界は最大103億人を養う潜在力を持っていると指摘しています。しかし、この目標達成は、食料生産方法、そして環境、社会、経済にどの程度のコストがかかるかにかかっています。将来の生産性向上は、単に生産量を増やすのではなく、よりスマートな生産によって実現される必要があります。これは、収量ギャップ(現在得られている収量と潜在的に達成可能な収量の差)の解消、レジリエンスな作物品種への多様化、そして特定の土地・土壌・水条件に適した、地域に根ざした資源効率の高い生産方法の導入を意味します。
数百万の小規模農家が依存している天水農業においては、保全農業、干ばつ耐性作物、そして土壌水分保全、作物の多様化、有機堆肥化といった生産方法の普及によって、生産性を大幅に向上させることができます。こうした生産方法は、数百万の小規模農家の食料安全保障を強化すると同時に、土壌の健全性と農場内の生物多様性を向上させることができます。アグロフォレストリー、輪換放牧、飼料改良、稲作と養殖を組み合わせた統合システムは、持続可能な集約化への新たな道筋を提供します。生産性の大幅な向上の可能性は、特に開発途上地域において高いです。例えば、サハラ以南アフリカでは、適切な管理下において、天水作物の収量は、現在、達成可能な潜在量のわずか24%にしか達していません。
報告書はまた、万能の解決策は存在しないと強調しています。持続可能な解決策には、一貫した政策、強力なガバナンス、アクセス可能なデータと技術、イノベーション、リスク管理、持続可能な資金調達と投資、そして組織やコミュニティ全体の能力強化が必要です。
(参考文献)
FAO. 2025. The State of the World’s Land and Water Resources for Food and Agriculture 2025 – The potential to produce more and better. Rome.
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)