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1354. 健康的で持続可能かつ公正な食料システム

1354. 健康的で持続可能かつ公正な食料システム
2019年に最初のEAT-ランセット委員会報告書が発表され、主に植物由来食品の摂取を重視するプラネタリーヘルスダイエット(PHD)を提唱しました。この度公表されたEAT-Lancet委員会による最新の分析は、公正な食料システムの社会的基盤に関する分析を追加し、新たなデータと視点を取り入れることで、食料システムにおける公平性に関する世界的な概念を提供しました。
報告書は、プラネタリーヘルスダイエット(PHD)は、多様で文化的に適切な食事が存在できる枠組みとみなし、最新のエビデンスが、健康状態の改善、全死亡率の大幅な低下、主要な食事関連慢性疾患の発症率の大幅な低下との強い関連性を裏付けていると強調します。ただし、PHDを成功させるには、文化的背景を慎重に考慮し、文化的に適切で持続可能な食生活の伝統を促進する必要があります。
報告書はまた、食料システムが地球規模で9つのプラネタリーバウンダリーに占める割合を定量化しました。これらの食料システムの境界は、食料がプラネタリーバウンダリーの境界超過の最大の原因であり、6つの境界のうち5つの境界超過を引き起こしていることを確認しています。食料システムは、気候境界と海洋酸性化境界に顕著な影響を及ぼしています。持続不可能な土地利用変化、特に森林破壊は、生物多様性の喪失と気候変動の主要な要因であり続けており、残存するすべての健全な生態系への影響をゼロにする必要があることを浮き彫りにしています。食料システムは窒素とリンの境界超過のほぼすべてを占めており、養分管理、効率的な養分再分配、そして循環型システムの改善が必要であることを示しています。食品の生産、加工、包装における新規物質(プラスチックから農薬まで)の大量使用は依然として大きな懸念事項であるものの、その研究は驚くほど限られています。
報告書は、また、正義に関する評価において、健康的な食事、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)条件、そして健康的な環境へのアクセスにおいて重大な不平等が存在し、低所得地域の周縁化された集団に不均衡な影響を与えていることを明らかにしました。報告書は、これらの権利の実現を可能にする社会基盤を提案、とりわけ、健康的な食事へのアクセス、その手頃な価格、そして需要の創出を重要視しています。しかしながら、世界人口のほぼ半数がこれらの社会基盤を下回っており、基本的人権の実現能力が損なわれている一方、同時に、世界の大半(69億人)の食生活は、地球の限界をさらに超える脅威となっています。不健康な過剰消費が地球のシステムを不安定化させる現象は、健康的な食生活を単なる人権としてではなく、共通の責任として捉えることの重要性を浮き彫りにしています。
(参考文献)
Rockström, Johan et al. The EAT–Lancet Commission on healthy, sustainable, and just food systems, The Lancet, https://doi.org/10.1016/S0140-6736(25)01201-2
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)