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1345. 食料システムの変革:その根拠と方法論

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1345. 食料システムの変革:その根拠と方法論

 

世界の食料システムを変革し、回復力のある持続可能な食の未来を実現することは、人類が直面する最も喫緊の課題の一つです。食料需要と食習慣の世界的な変化は、保健医療システムと環境に持続不可能な負担をかけると同時に、食料の生産と供給に対する新たな脅威もいくつか生じています。食生活関連疾患が労働生産性と早期死亡に及ぼす悪影響、食料生産を支えるために必要な天然資源の破壊、温室効果ガス排出量への高い寄与、そして社会経済的、政治的、環境的課題が続く中で、世界人口を養う規模の食料供給を維持することがますます困難になるという予測など、変化の必要性は明白ですが、効果的な政策を見出すことを非常に困難にしている要因がいくつかあります。その要因には、食料セクターの経済への貢献の大きさ、農村生活への影響、世界的な相互作用の複雑さ、そして生産者と小売業者の間の力関係の不均衡などが含まれます。

フィロソフィカル・トランザクションズ(Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences)誌で公表された論文は、食料システム変革の根拠と方法論について議論をしました。

伝統的に、農業と栄養学は世界の食料供給に最も関連性の高い分野と考えられてきました。現在では食料供給に関連する分野のリストはさらに長くなっており、例えば、遺伝子工学からプロセス工学に加え、経済学の分野では、単純な需要と供給の経済学にとどまらず、年間を通して供給を確保するための食品調達地理経済モデル化にまで及びます。こうした関連分野の広がりを受け、近年では、学際的な研究が推進され、研究以外のより広範な食料システムのさまざまなプレーヤーが、研究プロジェクト(個別の研究)とプログラム(相互に関連するプロジェクト)に参画し、共同で設計や実施に取り組む傾向があります。

重要なのは、健康、環境、社会経済的要因の複雑な相互作用を考慮し、ある分野の問題に対する解決策が別の分野の犠牲を払うことのないよう、潜在的なトレードオフを探ることです。健康な食品の入手可能性と手頃な価格を向上させるための介入は、関連する農家や企業の収益性と存続可能性も確保する必要があります。同様に、環境の質を向上させる対策は、食料安全保障を犠牲にして導入することはできません。逆もまた同様です。

食料システムの変革を成功させるための最初の課題は、必要な学際的研究を可能にする新たなアプローチを開発することです。この問題を地球規模の視点から考察し、すべての国が直面する課題を解説するとともに、農業食料システム内の相互関係を活用し、多様な意見を意思決定に参加させる長期的なプログラムと投資サイクルの重要性を認識し、各国がそれぞれ異なる解決策で課題を克服しなければなりません。

論稿は、英国で実施された研究から得られた知見をもとに、生産、製造、サプライチェーン、消費といったテーマを横断し、地域社会と政策の両方を考慮し、研究者だけでなく実務家や政策立案者にも示唆を与えることを、食料システム変革を支援するための重要な行動領域として提示しました。研究においては、農家から政策立案者、地域社会団体、大企業、中小企業に至るまで、食料システムに関わるすべての人々が協力して設計・参画することの重要性が強調されています。これは、食料システムを人々と地球にとってより健康的なものに変革するための方法を意思決定者に伝えるためのエビデンスを提供する上で不可欠です。

 


(参考文献)
Horton, P., Gill, M., Poppy, G. 2025, Food systems transformation: rationale and methodologies. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences https://doi.org/10.1098/rstb.2024.0146

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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