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1180. 飢餓撲滅に向けた「ムーンショット」イノベーション

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1180. 飢餓撲滅に向けた「ムーンショット」イノベーション

 

1月14日、153人のノーベル賞および世界食糧賞受賞者らが、今後25年間で飢餓の危機を回避する可能性が最も高い「ムーンショット」技術の開発に向けた財政的および政治的支援を求める公開書簡を発表しました。

この呼びかけをとりまとめた、2024年世界食糧賞受賞者であり、米国国務省の世界食料安全保障担当特使をつとめられたキャリー・ファウラー博士は、「すべての証拠は、世界が従来通りのビジネスを続けるなら、食料生産性が悪化していくことは避けられない」と述べています。公開書簡は、現在7億人が飢餓に苦しんでおり、2050年までにさらに15億人を養う必要があると推定、世界が将来の食料ニーズを満たすには「まだまだ遠い」と警告しています。国際社会が最新の研究とイノベーションへの支援を強化しない限り、今世紀中ごろには世界は食料不安に直面し、特にアフリカでは人口が最も急速に増加しているにもかかわらず、主食であるトウモロコシの収穫量はほぼ全域で減少することが予測されています。

公開書簡は、食料栄養安全保障のためには、漸進的ではなく現実的な飛躍をもたらす、地球に優しい「ムーンショット」(planet-friendly moonshot)な努力が必要であるとし、その成功には、AI・計算生物学・先進的なゲノム技術、といった科学を推進しうる環境整備に向けた政策・規制・インセンティブの必要性を訴えます。2050年までに世界の食料供給と需要の悲劇的なミスマッチに向かう軌道を逆転させるには、喫緊の行動が求められています。

科学者らは、投入財から生産・収穫後の段階に至るまで、食料バリューチェーン全体での変革的な取り組みを提唱しています。近年の生物学と遺伝学における著しい進歩を踏まえ、ムーンショットの課題として、次の研究課題が挙げられました:コムギやコメなどの作物における光合成の向上、主要穀物の生物的窒素固定、一年生作物から多年生作物への転換、新規作物および機会作物の開発、多様な作物システムの展開、果物や野菜の保存性と賞味期限の延長、食品安全性の向上、微生物や真菌からの栄養豊富な食品の創出。そのうえで、これらの科学研究イニシアチブの成果が、最も必要とされる人々に届き、利益をもたらすための戦略の重要性が指摘されました。

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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