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721. キヌアの日 ~キヌア研究における国際農研の貢献~

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ボリビア

キヌアの日 ~キヌア研究における国際農研の貢献~

「キヌアの日」の由来は、FAOが2013年2月20日に「国際キヌア年」の開幕式典を開催したこと、2016年の同日に日本キヌア協会が発足したことから、2017年に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録されました。今日のPick Upでは、キヌア特集として、キヌア研究における国際農研の貢献について解説したいと思います。

 

1. スーパーフード「キヌア」

スーパーフードといえば、どんな作物を思い浮かべますか?
キヌアもそのスーパーフードの1つと言われています。

 

まずは、キヌアについて、リャマちゃんに解説してもらいましょう。

CV: VOICEVOX:櫻歌ミコ

 

栄養価の高く注目されているキヌアは、我が国を含む100カ国以上に普及しつつありますが、生産量については、原産国であるペルーとボリビアでほとんどを占めています。

 

 

2.    キヌア研究における国際農研の貢献

キヌアはボリビアのウユニ塩湖の近辺という厳しい環境でも育つ奇跡の作物です。このような環境に耐えることができるのはなぜでしょうか?
それを解明するにはキヌアが持つ遺伝子の機能を調べる必要があります。そして、そのカギとなるのは、「ゲノム」と呼ばれるDNAに含まれる遺伝情報です。
国際農研は2016年、世界で初めてキヌアのゲノムを解読しました。得られたゲノム配列はデータベース化して公開しており、世界各国のキヌア研究者に貢献しています。

(成果情報:キヌアの標準自殖系統とゲノム配列

 

遺伝子の働きを調べるのはとても大変です。
遺伝子に変異を与えて働かなくしたり、過剰に働くようにしたりして、植物がどのように変化するか観察なければなりません。
国際農研ではウイルスベクターを用いて、キヌアで初めて遺伝子の働きを調節して、葉や茎などの色や背丈、花の形などを制御することに成功しました。この技術の開発によって、個々のキヌアの遺伝子の機能や役割を調べることが可能になり、キヌアの持つ優れた栄養特性や高い環境適応性に関わる機構の解明に道が拓かれました。

(成果情報:ウイルスベクターを用いたキヌアの遺伝子機能解析法

 

国際農研では、公開されている世界の主要なキヌアの多様な特徴と遺伝子の関連を調べています。
耐塩性や生育の異なる多様なキヌアのコレクションは、今後のストレス耐性、収量安定性、高栄養価なキヌアの開発に結び付きます。さらに、キヌアは我が国を含む100カ国以上に普及し栽培されており、世界で行われるキヌアの品種開発の加速化にも貢献します。

(成果情報:キヌア自殖系統コレクションの多様性

 

2020年より国際農研は、ボリビアのサン・アンドレス大学(UMSA)・農業研究普及機関PROINPA、京都大学・帯広畜産大・東京農工大学と共同で、「高栄養価キヌアのレジリエンス強化生産技術の開発と普及」についての研究を実施しています。
キヌアの品種改良・高付加価値化への道筋をつけるのみならず、厳しい環境・気象条件に適応する作物のメカニズムを明らかにすることで、気候変動に対する育種戦略への知見を得ることを目指しています。

SATREPS スーパーフード ボリビア

 

 

(文責:情報広報室 金森紀仁、生物資源・利用領域 藤田泰成、永利友佳理)
 

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