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261.スーパー作物キヌア - 食料・栄養問題解決にインパクトを与えるキヌア研究

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2021年12月、東京栄養サミット2021が開催されます。東京栄養サミットでは栄養に関連する様々な分野を取り上げ、世界各国の栄養関係者とともに課題解決に向けて議論し、取組を発表する場となります。具体的には、(1)栄養のユニバーサル・ヘルス・カバレッジへの統合、(2)健康的で持続可能なフードシステムの構築、(3)脆弱な状況下における栄養不良対策、(4)データに基づくモニタリング(説明責任)、(5)栄養改善のための財源確保、の5つのテーマを取りあげる予定となっています。

国際農研では、栄養バランスに優れ、世界中でスーパーフードとして人気が高まっている南米アンデス原産のキヌアを用いた研究を行っています。キヌアは干ばつなどの過酷な環境でも栽培できることから、国際連合食糧農業機関(FAO)は、世界の食料・栄養問題解決の切り札になり得る作物として注目しています。

これまでに国際農研では2016年に世界で初めてキヌアのゲノムを解読し、2020年にはキヌア系統の多様性を明らかにしてきました。さらに、これらの成果をもとに、キヌア遺伝子の働きを調節することにより、キヌアの葉や茎などの色や背丈、花の形などを制御することに成功しました。この技術の開発によって、個々のキヌアの遺伝子の機能や役割を調べることが可能になり、キヌアの持つ優れた栄養特性や高い環境適応性に関わる機構の解明に道が拓かれました。本研究の成果により、原産国のボリビアなどの南米諸国のみならず、我が国を含む100カ国以上に普及しつつあるキヌアの栽培国において、優れた栄養特性を持ち過酷な環境に適応できるスーパー作物キヌアの品種開発が加速化し、世界の食料安全保障や栄養改善、飢餓の撲滅(SDGs目標2「飢餓をゼロに」)に貢献することが期待されます。

(参考)
スーパー作物キヌアの遺伝子機能解明への道を切り拓く―優れた環境適応性や栄養特性の謎を解き、作物開発を加速化―
https://www.jircas.go.jp/ja/release/2020/press202007

(文責 生物資源・利用領域 藤田泰成、 研究戦略室 金森紀仁)

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