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516. 栄養に富み、環境を再生し、全ての人々に平等な経済機会を創出する食を目指して

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516. 栄養に富み、環境を再生し、全ての人々に平等な経済機会を創出する食を目指して

昨年9月の国連食料システムサミットでは、地球と人類の健康に資する食へのシフトが最大のアジェンダとなり、国際機関や政府だけでなく、市民社会や民間セクターなど多様な関係者が変革に向けたコミットメントを表明しました。 

本日は、国際農業研究の動向にも大きな影響力をもつアメリカのロックフェラー財団の戦略を紹介します。財団は、20世紀半ばにおいて飢饉撲滅を目的とした食の量的増産を達成した農業研究の推進において、とくに大きな役割を果たしてきました。他方、財団は、今日の食の生産・消費の在り方が人類・地球の健康を大きく損ねていると認識しています。食料システムは世界市場価値で9兆ドルにものぼりますが、極度の貧困に陥っている人々の3分の2が農業労働者やその家族です。また、不健康な食生活は5人に一人の死亡の原因となる一方、主要な温室効果ガス排出源ともなっています。

財団は、全ての人々が質の高い食を物理的にも経済的にも入手可能となる世界を目指すGood Food Strategyに1.05億ドル相当を投じることを発表しました。

栄養に富み、環境を再生し、フードサプライチェーンに関わる全ての人々に平等な経済機会を創出する食料システム構築に向け、とくに次の3分野の活動への支援が実施されるとのことです。

グッドフードのためのデータと科学イノベーションGood Food Data & Science Innovations:食の真のコストと便益に関する指標やデータシステムへの支援を通じ、意思決定者への情報提供の向上を目指します。具体的には、消費者の支払う価格に反映されないフードシステムの真のコスト推計、環境再生型・アグロエコロジカルな農業のための原理や評価指標の標準化・民主化; 食のクオリティに関する定義の整理; 世界中で最も重要な食に関する包括的な生化学や機能に関する公的なデータベースの構築、に関するイニシアチブを含みます。

グッドフードのための政策Good Food Policy: 健康な食へのアクセスを改善するために、効果的でデータに基づく政策を推進します。その中心となるのが、食生活関連の疾病の解消に向けたヘルスケア・医食同源を目指すプログラムの推進です。

グッドフードのための調達Good Food Purchasing: 学校や病院に対し、給食など既存の食料調達予算を活用し、加工食品から全粒穀物へのシフトを通じ、人類・地球に資する食を提供する試みを支援することで、より健康で持続的な食の未来に貢献することを目指します。


飢饉解決から地球・人類の健康に資する食料システム構築へと、国際農業研究の展開と展望に関しては、2022年3月12日に開催された農学会・日本農学アカデミー 共同主催公開シンポジウム『持続可能な食料システムに向けて』 でも議論されました。 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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