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493. 雑穀の日

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写真は主要な雑穀の1つソルガムです。


493. 雑穀の日

3月9日は『雑穀の日』です。雑穀はイネ科作物のうち、小さい穎果をつけるヒエ、アワ、キビなどを表し、英語でmilletはその総称としても用いられています。

国連は昨年、2023年を『国際ミレット年(International Year of Millets)』と宣言する決議を採択しました。 

ミレットは、主にアジアやアフリカの乾燥地帯で栽培されており、FAO統計で2020年のミレット*の生産量を見ると、アジアが世界の50%以上、アフリカが45%とこの2地域でほぼすべてを占めています。国別に生産量を見てみると、インドが1,249万トンで世界の41%、ニジェールが351万トン(11%)、中国が230万トン(7%)と続いています(表、下図)。

 

表 ミレットの生産量(単位万トン) FAOSTATより
インド                 1,249
ニジェール            351
中国                        230
ナイジェリア        200
マリ                        192
エチオピア            122
セネガル                114

*統計はミレット(Pearl millet, Finger millet, Proso/Common millet, Foxtail millet, Barnyard millet, Little millet, Kodo millet)の総量です。

 

国連は、2016年から2025年までを「栄養のための行動の10年」と宣言し、その間に、2016年の『国際マメ年』や2021年の『国際果実野菜年』などを制定して、世界で飢餓をなくし、栄養不良を根絶する行動を活性化させ、より健康で持続可能な食事にアクセスできるよう取り組んでいます。そして、2023年は『国際ミレット年』とし、栄養、農業、気候の課題に対応するための雑穀の役割を認識し、雑穀の気候耐性と栄養面での利点に対する認識を高め、雑穀の持続可能な生産と消費の増加を通じて、多様でバランスのとれた健康な食生活を提唱するとしています。

ミレットは、その高い栄養価から「栄養穀物(Nutri-Cereals)」とも呼ばれており、ビタミンや鉄・カルシウムなどのミネラルが豊富で、タンパク質や食物繊維、レジスタントスターチ(難消化性デンプン)が多く含まれ、グリセミック指数が低いため、糖尿病の予防や管理にも役立つとされています。また、小麦、米、トウモロコシなどの穀物と比較して、降雨量が少なく非灌漑条件下でも栽培することが可能なため、乾燥地及び半乾燥地など不良環境における主要な食物資源となっています。このように雑穀は高い栄養価と農業生態環境への広い適応能力を持つことから、世界の食料安全保障と飢餓の解消に大きな役割を果たすことが期待されています。

 

国際農研は、ミレットと並ぶ主要な雑穀の1つであるソルガム**の研究を行い、これまでにソルガムの根からソルゴレオンをはじめとする多くの化学物質を見つけてきました。これらの物質は、土壌微生物がアンモニアを硝酸に変換することを抑えており、この機能を生物的硝化抑制(Biological Nitrification Inhibition, BNI)と言います。生物的硝化抑制により硝酸による地下水汚染や温室効果ガスの発生が抑えられるため、世界中が注目しています。この生物的硝化抑制の研究は他の作物にも発展し、昨年、コムギにも硝化抑制機能を持たせることに成功しました。この成果は、2021年農業技術10大ニュースにも選定されています。

** ソルガムはアフリカ原産で、エジプトでは紀元前約3世紀頃から栽培され始め、インドやアジアなど広範囲で栽培されています。日本で『モロコシ』や『タカキビ』と呼ばれています。

 

(参考)

UN News
https://news.un.org/en/story/2021/05/1092492

2021年農業技術10大ニュースに「BNI強化コムギの開発」が選定
https://www.jircas.go.jp/ja/reports/2021/r20211224

ソルガムの根の生物的硝化抑制(BNI)物質の同定と特性
https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2012_04

ソルゴレオンはソルガムの重要な生物的硝化抑制物質の一つである
https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2014_a07

 

(文責:情報広報室 金森 紀仁)

 

 

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