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249. 雑穀の日

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3月9日は、語呂合わせにより「雑穀の日」とされているそうです。日本雑穀協会によると、雑穀は時代背景や主食の変化につれ、捉えられ方も変わってきており、日本雑穀協会では、農学的な狭義の雑穀の定義を尊重しつつ、主食以外に日本人が利用している穀物の総称と定義しています。 狭義ではイネ科の草本のキビ亜科に含まれる穀類、キビ亜科以外のイネ科穀物では、モロコシ属のソルガム、ハトムギも含まれ、大豆、小豆、菜豆(インゲンマメ)の豆類、ソバ、キヌア等の擬似穀類、ゴマ、ヒマワリ等の粒食もされる油糧作物他を含みます。


雑穀には、ナイアシン、ビタミンB12、B6、葉酸などのビタミンB群、カルシウム、鉄、カリウム、マグネシウム、亜鉛などのミネラルが豊富に含まれます。日本では、昭和期に米が増産されるとともに消費と栽培が廃れ、飼料用としての利用が多くなっていますが、最近になり健康食品として見直されつつあり、需要に対して生産量が少ないため、米よりも高価格帯で取引されています。 

また、雑穀は世界中の乾燥地及び半乾燥地など不良環境における主要な食物資源となっています。このように雑穀は高い栄養価と農業生態環境への広い適応能力を持つことから、世界の食料安全保障と飢餓の解消に大きな役割を果たすことが期待されています。国際農研では、アジアにおけるソバ、アフリカのアマランサス、南米のキヌアなど、厳しい環境に順応し、機能性が高いものの、これまで安定した生産や利用のための十分な研究が行われてこなかった作物に注目し、現地のパートナーと国際共同研究を行っています。

例として、中国四川・雲南省を起源地とするダッタンソバ(Fagopyrum tataricum)をあげます。ダッタンソバは普通ソバ(F. esculentum)と比べても非常に高いルチンやケルセチン(血管収縮抑制作用や抗酸化能として知られる)を含むことから、付加価値の高い作物として知られています。また、高標高地帯でも栽培が可能であり、平地では収量も高いことから、中国、ロシア、ネパール、ヨーロッパ諸国で古くから栽培されており、特に他作物の栽培が困難な山間地帯では現在でも主要な食料資源となっています。しかし、その子実は硬質な果皮(殻)を持つため加工を困難とし、その粉は加工中に非常に苦味の強いケルセチンを生成することから通常の粉としての利用が限定されていました。国際農研では、加工面の改善からダッタンソバの有用性を高めつつ現地へ裨益する研究として、苦味の生成を抑制しつつ殻を容易に取り除く簡易な加工法(簡易膨化処理)の開発を行っています。簡易なだけでなく、安価な技術により、現地での労働時間削減や栄養改善に繋げたいと考えています。

 

参考文献

Fujita K. and Yoshihashi T. (2019), Food Science and Technology Research 25 (4): 613-618  https://doi.org/10.3136/fstr.25.613

(文責:生物資源・利用領域 藤田かおり、吉橋 忠)
 

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