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733. 2023年3月9日は、雑穀(ミレット)年・雑穀の日

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733. 2023年3月9日は、雑穀(ミレット)年・雑穀の日

 雑穀はイネ科作物のうち、小さい穎果をつけるヒエ、アワ、キビなどを表し、英語でmillet(ミレット)はその総称としても用いられています。ミレットは主要な穀物に比べてやせた土地や乾燥した土地でも生育でき、気候の変化にも強い作物です。さらに、その高い栄養価から「栄養穀物(Nutri-Cereals)」とも呼ばれ、スーパーフードとして注目されています。
 3月9日は『雑穀の日』です。日付は「ざっ(3)こく(9)」(雑穀)と読む語呂合わせが由来で、一般社団法人・日本雑穀協会が制定し、一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録されました。また、2023年は国際雑穀年なので、2023年3月9日は、『雑穀年・雑穀日』なのです。

 

不良環境に強いミレット。だが…

 ミレットは、小麦、米、トウモロコシなどの穀物と比較して、降雨量が少なく非灌漑条件下でも栽培することが可能なため、主にアジアやアフリカの乾燥地帯で栽培されており、主要な食物資源となっています。2021年のミレットの生産量は、アジアが世界の56%、アフリカが40%でした(FAO統計)。
 ミレットの1つであるパールミレットは、気候変動に最も脆弱な地域サブサハラアフリカにおいて、穀物生産量のトップ3に入る穀物なのです。サハラ砂漠を起源としており、土壌水分量が少ない砂質土壌での栽培に適しています。このように、パールミレットは、気候変動に対処するための最も重要な作物のひとつと考えられています。
 西アフリカにおいて古くから改良、栽培されてきたランドレース(土着品種)173種の多様性を、農学的に重要な指標からなる気候データセットとともに解析・将来予測したところ、2050年に早咲きと遅咲きの両方の品種の現在の栽培地域の北端が、気候変動に対して最も脆弱であることが判明しました(Bénédicte Rhoné et al. 2020; Adama Faye et al. 2022)。

 

多様性を生かそう

 気候変動はすでに地球規模で農業生態系に影響を及ぼしており、農作物の生産性の低下や収穫の不確実性など食料安全保障を脅かしています。Bénédicteらは作物の多様性を活用するで、その影響を軽減するための効率的な方法となり得るとし、サハラ以南のアフリカの乾燥した低肥沃度土壌で栽培されている栄養価の高い主食用穀物であるパールミレットでこの仮説を検証しました。
 気候変動に脆弱な地域では、同様な気候条件下で生育しているランドレースを利用することで利益を得ることができるとしています。これには、長距離かつ国境を越えた種子交換が必要となります。気候緩和戦略として遺伝的多様性を活用するには、地域や国を超えた協力が必要です。

 

(参考)
今年は国際雑穀(ミレット)年(Pick Up694)
https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20230112

Adama Faye et al. (2022) Genomic footprints of selection in early-and late-flowering pearl millet landraces. Front Plant Sci. 13: 880631. 
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2022.880631/full

Bénédicte Rhoné et al. (2020) Pearl millet genomic vulnerability to climate change in West Africa highlights the need for regional collaboration. Nature Communications 11: 5274. 
https://www.nature.com/articles/s41467-020-19066-4

 

(文責:情報広報室 金森紀仁、情報プログラム ドゥ ヴ タン)
 

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