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420. アジアモンスーン地域での持続的な食料システム実現に向けた国際連携

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420. アジアモンスーン地域での持続的な食料システム実現に向けた国際連携

グローバルフードシステムは、人類・地球の健康に多大な負荷をもたらしており、生物多様性喪失、土地利用変化、窒素・リン循環、気候変動の分野で、地球の限界「プラネタリーバウンダリー」を超える要因となっています。同時に、フードシステムは異常気象現象に最も影響を受けるセクターでもあり、食料・栄養安全保障の危機をグローバルに拡散するチャネルにもなっています。

このため、資源の効率利用を通じ、温室効果ガス排出の削減と生物多様性保全を達成しながら、極端現象へ強靭なフードシステムの構築に資するイノベーションが求められています。同時に、各地域に特有のニーズに配慮しなければ、食料栄養安全保障などの持続可能な開発目標と気候変動緩和策はトレードオフをもつことも多々あり、万能なイノベーションというものは存在しません。このため、各地域固有の農業生態学的・社会経済的条件を最大限に配慮し、トレードオフをもたらす制約要因を克服し、誰も取り残さないため、学際的、かつ研究・開発・政策関係者の協力による調整が必要となります。

人類の三分の二がモンスーンに影響される地域に居住しているとされます。その中でも、アジアモンスーン地域は、東アジア、東南アジア、南アジアをカバーし、世界人口の50%を超える人口を擁するとの推計もあります。アジアモンスーン地域は湿潤気候によって特徴づけられますが、気候変動に最もさらされる地域の一つとされています。そこで、この地域において気候危機への適応・緩和を進めつつ、最小限の環境負荷で食料生産を実現する上で、イノベーションが中心的な役割を果たします。

稲作システムがアジアモンスーン地域の食料生産の基礎ではありますが、地域の農林水産業セクターを規定する農業生態系・社会経済的条件は極めて多様です。社会経済条件をとってみても、G20やG8加盟国から緊急食糧支援対象国まで、また少子高齢化が農林水産業の課題となっている国から若い人口と都市化により食生活の急激な変容を経験している国まで、まさに多様な国々をカバーしています。したがって、「万能策なイノベーションはない」という原理はアジアモンスーン地域内でも尊重されなければなりません。

アジアモンスーン地域のグローバル経済における重要性を踏まえ、この地域で持続可能なフードシステム転換の成功例を積み重ねることは、日本にとっても世界的にとっても重要な意味を持ちます。アジアモンスーン地域内で、似たような農業生態系・社会経済的条件を共有する国々が有望なイノベーションについての知識と実行例を共有するプラットフォームへの期待が高まります。プラットフォームの実現には、農業研究機関、開発機関、政策機関、フードバリューチェーン関係者や政府・行政関係者を含む、全てのステークホルダーが、アジアモンスーン地域および各国において生産性向上と環境持続性の両立というゴールについて、共通の認識を有する必要があります。

明日、11月17日(水)にオンライン開催されるJIRCAS国際シンポジウムにおいては、世界のフードシステム転換を巡る動向に関する基調講演のあと、国際機関・開発機関・研究機関の代表者がパネリストとなり、アジアモンスーン地域の多様性に配慮し、イノベーションによって誰も取り残さない持続可能な開発を達成していくか、そのための協力メカニズム・プラットフォームについて意見を交わします。ぜひ、ご視聴ください。

JIRCAS国際シンポジウム2021
アジアモンスーン地域における持続的な食料システム実現に向けたイノベーション
―「みどりの食料システム戦略」に資する国際連携に向けたプラットフォーム―

日時:令和3年11月17日(水)14:00~16:15
開催:オンライン(YouTube JIRCAS channelよりライブ配信)
プログラム:https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2021/e20211117
申込:https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2021/e20211117/entry
締切:2021年11月16日(火)午前9時*

*締め切りを過ぎてしまった場合は、以下、情報広報室にお問い合わせください。

Email: koho-jircas@ml.affrc.go.jp
URL: https://www.jircas.go.jp/ja/form/inquiry

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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