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409. アジアモンスーン地域の持続的な食料システム実現に向けて

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アジアモンスーン地域の持続的な食料システム実現に向けて

国際農研は、11月17日にアジアモンスーン地域の持続的な食料システム実現に向けた国際シンポジウムを開催します。今日のピックアップでは、アジアモンスーン地域の特徴及び農業についてまとめたいと思います。

 

● アジアモンスーン地域

大辞泉によると、モンスーンは、季節を意味するアラビア語が語源で、本来はアラビア海で半年毎に向きが変わる季節風を指します。また、インドや東南アジアで、夏の季節風による雨季、または、雨季に降る雨のことを指しています。一方でモンスーンを表す季節風は、アジアのみならず、アフリカ大陸東部、カリブ海、南北アメリカ大陸東岸、オーストラリア東岸などでも見られ、Khromov(1957)は、1月と7月に現れる季節に特徴的な風の頻度が40%を越えており、その風向きの方向の差が120度以上あることと定義しています。特にアジアの季節風は非常に規模が大きく、アジアモンスーンとも呼ばれ、ほぼ東アジア・東南アジア・南アジアに相当します。

● アジアモンスーン地域の農業

アジアモンスーン地域では、夏には海側からの季節風により強い降雨を伴う雨期となるため、古くから稲作が食料生産の基本として行われ、米作文化が育まれてきました。2012年の古いデータではあるが、アジアモンスーン地域の米生産量は64,600万トンに上り、これは全世界の約86.6%を占めています。また、水稲作は高い人口密度を養うことができることから、アジアモンスーン地域に世界人口の約52%(アジアの人口の約86%)が集中しているとの結果が出ています(久馬.2016)。また、モンスーンアジアの水稲栽培地帯は零細農家が多いといった共通の特徴がみられ、この地域の水田を中心とした農業生態系は、欧米の畑や草地を中心とした農業生態系とは大きく異なっています。

● アジアモンスーン地域の農業のこれから

7月19日、野上農林水産大臣(当時)と東南アジア各国の農林水産担当大臣の間で、「持続可能な農業生産及び食料システムに関する共同文書」に合意がなされました。この会合には、日本、カンボジア、ラオス、フィリピン、シンガポール、ベトナムが参加し、共同文書にはマレーシアも参加しています。アジアモンスーン地域は、上記のように夏多雨の気候条件、稲作主体の農業、中小規模農家が多いという特殊性を共有しており、欧米とは農業を行う上で条件等が異なることが分かります。持続可能な農業生産及び食料システムの目標に至るための万能な解決策はなく、各国の状況に合わせて取り組むことの重要性を強調しています。

● 国際農研の取り組み

国際農研は、1970年に熱帯農業研究センターとして設立して以来、熱帯及び亜熱帯に属する地域その他開発途上地域における農林水産業に関する技術向上のための試験研究を行っています。特にアジアにおいては、タイのバンコクに東南アジア連絡拠点を設けるなど、アジア諸国の農林水産業に関する情報の収集・分析および提供を行い、各国の政府および農業研究機関と密な連携を通じて、食料問題、環境問題の解決及び農林水産物の安定供給等に貢献しています。今回、国際農研はJIRCAS国際シンポジウム2021を開催し、アジアモンスーン地域における農業生産性の向上と持続性を両立するイノベーションについて、世界の農業分野で活躍する国際機関、農業研究機関、開発機関の専門家とともに議論します。是非ご参加ください。


 

JIRCAS国際シンポジウム2021
アジアモンスーン地域における持続的な食料システム実現に向けたイノベーション
―「みどりの食料システム戦略」に資する国際連携に向けたプラットフォーム―

日時:令和3年11月17日(水)14:00~16:15

開催方法:オンライン(YouTube JIRCAS channelよりライブ配信)

申込:国際農研のホームページからお申し込み下さい。
URL: https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2021/e20211117/entry
(申込締切:令和3年11月16日(火)午前9時)

使用言語:英語(日本語字幕あり)

参加費:無料(どなたでも参加できます)

(参考)
久馬一剛(2016)モンスーンアジアの土と水 ─とくにその低湿地利用について─,水利科学,No.351.
村上勝人(1992)4.アジアモンスーン─その気象と人象風景─,天気,39(7).
Khromov, SP (1957) Diegeographische Verbreitung der Monsune.Petermanns Geogr. Mitt., 101.
MARCO: モンスーンアジア農業環境研究コンソーシアム
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/marco/index_j.html

(文責:情報広報室 金森紀仁)

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