Pick Up
302. 国連 - 2021年半ば時点の世界経済状況と見通し
2021年5月、国連経済社会局より、2021年半ば時点の世界経済状況と見通しについての報告が公表されました。
報告書によると、世界経済は2020年の3.6%の縮小後、2021年の見通しは年初当時よりも回復して5.4%の成長が見込まれています。とりわけ中国とアメリカの2大国におけるワクチン接種の加速と財政金融支援策に支えられた堅調な経済回復に後押しを受け、世界経済の見通しはここのところ改善しています。対照的に、南アジア・サブサハラアフリカ・ラテンアメリカカリブ諸国などでは新型コロナ感染者数が増加しワクチン接種が遅々とする中、経済回復に暗雲が立ち込めており、多くの国でパンデミック以前の水準に経済活動が回復するのは2022年か2023年頃までかかるとされています。こうした経済格差の拡大、ワクチン接種の格差が2021年の世界経済成長率達成に影を落としています。世界経済の回復にはパンデミックの終焉が条件となります。
世界貿易は、電気・電子機器や 個人用保護具への需要に押され堅調に推移し、既にパンデミック以前の水準を上回っています。報告書は、これら製品製造・輸出に強い国は危機を乗り越え回復に成功していますが、観光・商品依存経済の復興はすぐに見込めそうにないとしています。 観光に代表されるサービス業は国際移動の規制緩和の遅れと、途上国における新しい感染の波への恐れのため、しばらく停滞が続くとされています。
報告書は、今回のパンデミックはとりわけ女性に負の影響をもたらしたと報告しています。女性は未払いの家事やケアワークの負担をかかえる一方、パンデミック対策の経済政策を決定するような意思決定に参加する機会にも恵まれていません。報告書は、女性など、今回の危機で最もインパクトを受けた社会層をターゲットにした政策の必要性を訴えました。
このPick Upでも何度かとりあげたように、COVID-19は、グローバル・フードシステムのチャネルも通じ、経済・食料栄養安全保障に不均衡なインパクトをもたらしています。 急性的な食料栄養安全保障だけでなく、より中長期的には、社会経済格差と機会へのアクセスを拡大させることで、人間開発の危機をもたらしています 。国際農研のミッションである、脆弱な生産システムを抱える開発途上国地域の農林水産業技術の向上をはかることは、グローバル・フードシステムの不均衡を矯正する優先事項です。
参考文献
United Nations. Department of Economic and Social Affairs Economic Analysis. World Economic Situation and Prospects as of mid-2021. 11 May 2021 https://www.un.org/sites/un2.un.org/files/wesp2021_update_1.pdf
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)