若手外国人農林水産研究者表彰

平成30年11月6日、国連大学ウ・タント国際会議場(東京都渋谷区)において若手外国人農林水産研究者表彰(農林水産省農林水産技術会議主催)の表彰式典が挙行されました。式典は、まず表彰式において、小林芳雄農林水産省農林水産技術会議会長の主催者挨拶に続き、来賓の皆様の挨拶、選考委員会の岩元睦夫座長より審査経緯の報告をいただきました。また、賞の授与では、小林会長より表彰状が、岩永勝JIRCAS理事長より甕・JIRCAS賞(奨励金の目録)が受賞者に授与されました。

表彰式に引き続き受賞者講演が行われ、受賞者による研究成果の発表が行われ、つつがなく式典を終えることができました。

本賞は、開発途上地域のための農林水産業及び関連産業に関する研究開発に優れた功績を挙げた若手外国人研究者を農林水産省農林水産技術会議会長が表彰するもので、今回が12回目です。受賞者と業績名は、次のとおりです。

受賞者と業績名(敬称略)

受賞者名:Andry ANDRIAMANANJARA (アンドリー・アンドリアマナンジャラ)
アンタナナリボ大学(マダガスカル)

業績名:マダガスカルの農業生態系における有機物動態とその作物生産における有効利用

Andry ANDRIAMANANJARA
[業績概要]

土壌有機炭素または有機質肥料資源は、土壌肥沃度の維持、作物の生産性の向上及び温室効果ガスの排出削減において、特に熱帯地域では重要な役割を果たす。受賞者とそのチームは、有機物の施用が作物生産性にもたらす効果と、有機物とマダガスカルの風化の極めて進んだリン欠乏土壌との相互作用を明らかにした。高地の生態系、特に土壌有機炭素含有量が少なくpHの低い農地では、堆肥施用によりイネの穀粒収量が有意に増大し、リン酸肥料の利用効率が向上した。一方、土壌中で利用可能なリンの量が比較的多い低地かんがい農地では有意な効果は見られなかった。

さらに、本研究では同国の多様な農業生態系における植物及び土壌中の炭素動態について新たな知見が得られた。受賞者は、同国の多様な農業生態系において、表層土壌は、深層土壌及び地上バイオマスに比べ果たす役割が大きく、炭素貯留の影響を受けやすいことを明らかにした。表層土壌中の炭素貯留は、標高、土質及び土地被覆によって異なっていた。

また、本研究では全国的な土壌有機炭素地図の作成を目的として、中赤外分光法(多様な農業生態系向け)、または可視近赤外(Vis-NIR)拡散反射分光法及び部分最小二乗法(PLS)(高地及び低地の稲作土壌向け)を用いた土壌有機炭素の正確な推定モデルが開発された。

受賞者名:Farah Fazwa Md Ariff (ファラ・ファズワ・モハマド・アリフ)
マレーシア森林研究所(マレーシア)

業績名:普及ハーブ種(Labisia pumila)の高品質栽培品種の作出

Farah Fazwa Md Ariff
[業績概要]

マレーシアにおける植物育種研究、とりわけ優良品種の育成は、食用作物種及び植林用樹種にのみ重点が置かれ、ハーブ種ではこれまで行われていなかった。受賞者は、ハーブ種Labisia pumila(サクラソウ科)の高品質栽培品種の開発研究の草分けとなった。育成優良品種は、研究開発に9年をかけて、他品種に比べ優れた形質を獲得した点で際立っている。優れた形態的特徴を持ち、高バイオマス、生育旺盛で、総フェノール含有量も高い。さらに、この新品種は異なる環境下で高い適応能力及び生存能力を示すことが実証されている。この品種のDNA及び化学的フィンガープリントも分析され、2017年にはマレーシアにおける植物品種保護(PVP:Plant Variety Protection)の対象として登録された。

また、一時的浸漬培養系(TIS)を用いた組織培養による大量生産技術も開発された。この技術により、従来の組織培養法に比べ、より短期間かつ安価で大量の苗木を生産することが可能となる。さらに、業界の需要に応え、このハーブ種の高品質種苗等の生産向けに完全な研究開発パッケージが市販化されつつある。本研究で開発された技術により、原料採取による自然林への負荷を軽減することも可能となる。

受賞者名:章晋勇(しょう・しんゆう)
中国科学院水生生物研究所(中国)

業績名:養殖淡水魚における致死的寄生虫疾病の大発生要因となる多様な微生物の研究及び生物学的疾病予防方策の開発

章晋勇
[業績概要]

養殖現場では、薬剤耐性の増加とワクチンの不足により、寄生虫症のもたらす経済的及び生態学的損失が増加の一途を辿っている。このことは、的を絞った環境負担の小さい予防方策の開発が、養殖業の持続可能な発展のための喫緊の課題であることを示している。受賞者とそのチームは、中国の池中養殖ギベリオブナにおける粘液胞子虫症を対象とし、病原微生物の生態に基づく総合的予防方策を開発した。この方策は養殖生産の現場で導入され、化学物質の使用量を60%以上削減し、経済的損失を30%以上減少させた。

この方策は、1)ギベリオブナに寄生する30種以上の粘液胞子虫からの病原微生物の特定、2)主要病原性粘液胞子虫3種の生活環の解明、3)環境DNA分析を併用した、病原微生物を定性的及び定量的にモニタリングするための分子検出法(PCR、LAMP及びq-PCR)の開発、4)特定病原体未感染(SPF)ギベリオブナの種苗開発、5)水柱の感染性放線胞子の不活性化及び粘液胞子への成熟阻害に最も有効な化学物質のスクリーニング、その使用時期と期間の決定、6)休閑、輪作、及びソウギョ、ダントウボウ、アメリカナマズ、エビ及びチュウゴクモクズガニとの宿主特異性に基づいた混養による病原微生物の生活環の阻害から構成される。