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245. パリ協定に向けたコミットメントの進捗状況

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2021年2月、国連気候変動枠組条約は、各締約国が決定する貢献(Nationally Determined Contributions – NDCs)をとりまとめた報告書(The NDC synthesis report)を公表しました。 

今回の報告書は暫定版であり、2020年12月31日までに提出された75締結国のNDCsについての新・更新情報をとりまとめています。これら締約国は、パリ協定締約国の40%に相当し、世界の温室効果ガス排出の30%を占めています。報告書は、今回カバーされたNDCsでは、今世紀末までに気温上昇を2℃より十分低く、できれば1.5℃以下に抑えるというパリ協定の目標に満たず、各国の努力を倍にする必要が指摘されています。 国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)は、1.5℃ゴールを達成するには、2010年に比べ2030年の排出を45%削減しなければならないとしているのに対し、本報告書でカバーされたNDCsの排出削減効果は1%の削減しか見込まれないとのことです。

今回の報告書はパリ協定全締約国のNDCsを含んでおらず、とくに最大の排出国であるアメリカ、中国、インドはNDCsを12月末までに提出していなかったとのことです。 11月グラスゴーCOP26前に公表される予定の最終報告書は、より多くの締約国によるコミットメントを反映する予定ですが、国連は全締約国に対し2021年の間にNDCsを野心的に更新すべきとしています。

報告書はまた、多くの国が気候変動適応策・緩和策・経済多様化の相乗効果(co-benefits)に言及しているとします。例として、クライメート・スマート農業、食品廃棄物削減、垂直農業、適応的海岸エコシステム、再生エネルギー比率の増加、エネルギー効率改善、二酸化炭素吸収・貯留、輸送部門におけるエネルギー源代替・価格改革、廃棄物処理を通じたサーキュラー・エコノミー移行、が挙げられます。一方で、多くの途上国は気候アクション実施のための支援を必要としています。 

国際農研は開発途上国地域の気候変動対応農業技術開発を通じて、地球規模課題への貢献を目指しています。以前紹介した記事にあったように、健康向上・プラネタリーダイエットという視点を取り入れることも一つの方法かもしれません。

 

参考文献

United Nations Climate Change. Nationally determined contributions under the Paris Agreement. Synthesis report by the secretariat https://unfccc.int/sites/default/files/resource/cma2021_02_adv_0.pdf

United Nations Climate Change.  “Climate Commitments Not On Track to Meet Paris Agreement Goals” as NDC Synthesis Report is Published  ARTICLE / 26 FEB, 2021  https://unfccc.int/news/climate-commitments-not-on-track-to-meet-paris-… 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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