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150. 未来のフードシステム:人類、我々の地球、繁栄のために

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2020年9月末、栄養のための農業とフードシステムに関するグローバル・パネル (The Global Panel on Agriculture and Food Systems for Nutrition) が、「未来のフードシステム:人類、我々の地球、繁栄のために Future Food Systems: For people, our planet and prosperity 」を公表しました。報告書は、フードシステム・アプローチを用いた食生活の質を改善するための政策オプションを提示します。

今日、世界で6.9億人の人々が慢性的に低栄養状態にあります。その一方で30億人の人々が健康的な食生活に手が届かず、質の低い食生活が毎年1100万人の死亡原因となっています。持続的で、全ての人々に健康的な食生活を提供するには、機能不全状態にあるフードシステムの抜本的転換が必要です。温室効果ガス排出と生物多様性への影響を減らすべく、世界的に食生活パターンをシフトさせる必要があります。

報告書の目的と価値は、最も信用たる科学とエビデンスに基づきながら、とりわけ低中所得国における政策事情も踏まえ、現実的な提案を提供することです。他方、現在のように密接に関連しあう世界において、高所得国のアクションも低中所得国に影響を与え、また自身が肥満や食生活関連の疾病問題を抱えています。

本報告書は、現在のフードシステムが、健康な食生活に欠かせない食料を入手可能な価格で十分に生産できていないという根の深い課題を抱えていることを明らかにします。また、食料生産は、土壌・水・大気・生物多様性・気候変動などの自然環境の劣化をもたらしており、将来世代の福祉に甚大な影響を及ぼしかねません。この報告書が構想されたのは2018年でしたが、COVID-19は世界のフードシステムが抱えていた脆弱性と不安定性を晒すことになりました。現状は持続的ではありません。

食料のアベイラビリティ向上に関連し、持続的なフードシステムへの移行を導くための原理が重要となります。

  1. 量と質の双方が重要であり、栄養に富んだ食料を必要十分な量生産するというバランスをとる必要がある。
  2. 小規模農民による生産と彼らの健康増進・温室効果ガス排出削減・自然資源利用の最適化・アグロフォレストリー慣行を通じた炭素隔離、などを通じた小規模農業の支援
  3. 農業生産高の重視からフードシステム全体の効率性改善への食料政策のフォーカスシフト
  4. 農業の持続的集約化を通じた耕畜連携の理解―効率性改善、環境に負荷を与える慣行から環境に優しい慣行への転換、生産システムデザインの見直し。改善された栽培体系、デジタルイノベーション、新たな育種手法など、新規テクノロジーが持続的な生産性向上と農業生産システムの強靭性改善の推進に重要な役割を果たしうる。

 

参考文献

Future Food Systems: For People, Our Planet, and Prosperity (Global Panel on Agriculture and Food Systems for Nutrition, 2020). https://www.glopan.org/foresight2/ 

Webb, P., Benton, T.G., Beddington, J. et al. The urgency of food system transformation is now irrefutable. Nat Food (2020). https://doi.org/10.1038/s43016-020-00161-0

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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