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668. 貧困と繁栄の共有2022

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668. 貧困と繁栄の共有2022

COVID-19 によって、貧困撲滅の進展がとまりました。それ以前の30年間に、10億人以上の人々が極度の貧困から脱しました。しかし2015年以降、貧困削減のペースは停滞しはじめ、パンデミックに加えウクライナ戦争の影響を受け、2030年までに極度の貧困を撲滅するという世界目標の達成が著しく困難になっています。

世界銀行による「貧困と繁栄の共有2022-進路の修正(Poverty and Shared Prosperity 2022 : Correcting Course)」は、COVID-19とウクライナ戦争による世界の貧困への影響を包括的に分析し、低・中所得国における貧困削減達成の前提となる成長・発展を支える包括的な政策改革を提案しています。

報告書によると、パンデミック下で、極度の貧困は2019年の8.4%から2020年の9.3%に上昇しました。2020年末までに新たに7000万人以上の人々が極度の貧困に追いやられ、世界全体で7億人が貧困に陥ったことを示しています。世界の所得水準が収斂する傾向から離散する傾向に転じたという点で、2020年は歴史的な転換点であると言えます。貧困国においては先進国に比べ2倍のスピードで所得喪失を経験したとされ、数十年間ではじめて世界的に所得格差が拡大しました。

COVID-19からの回復の道のりは平坦ではありません。気候ショックと紛争に伴う食料・エネルギー価格高騰は回復を阻んでいます。2022年末時点で6.85億人の人々が極度の貧困状態にある見込みで、貧困削減という点からは2020年に次ぎ過去20年で2番目に悪い成績となります。報告書は、2030年に世界人口の7%に相当する5.74億人が貧困にとどまると予測しており、貧困率を3%まで減少させるという世界目標から乖離することになります。

このような後退に際し、進路を修正する必要があります。報告書は、世界の貧困削減と持続可能な開発目標に向けた進展のため、全ての所得水準にある人々、とりわけ最も貧困な人々を利する包括的な政策アクションの必要性を強調し、財政政策の転換等を提案しています。

(参考文献)
World Bank. 2022. Poverty and Shared Prosperity 2022 : Correcting Course. Washington, DC : World Bank. © World Bank.  https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/37739 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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