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117. グローバル多次元貧困指標 2020

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グローバル多次元貧困指標(the global Multidimensional Poverty Index: MPI)は、100以上の開発途上国をカバーする多次元貧困を測る国際的な指標であり、保健・教育・生活水準の急激な悪化を捉えることで、従来の貨幣ベースによる貧困指標を補完することを目指しています。

オックスフォード貧困・人間開発イニシアチブ(Oxford Poverty & Human Development Initiative: OPHI)と国連開発計画(UNDP)は、共同で「グローバル多次元貧困指標2020年 Global Multidimensional Poverty Index 2020 – Charting Pathways out of Multidimensional Poverty: Achieving the SDGs」を発表しました。主なメッセージは以下の通りです。

◾107途上国の59億人中、22%の13億人が多次元貧困のもとで暮らしています。

◾そのうちの半分(6.44億人)が18歳以下の子供であり、大人が6人に一人当たりであるのに対し、子供の貧困は3人に一人の割合になっています。

◾多次元貧困を被る人々の84%がサブサハラアフリカ(5.58億人)と南アジア(5.3億人)に暮らしています。多元貧困を被る人々の3分の2が中所得国に暮らしています。

◾59億人のうち71%が少なくとも一つの側面で剥奪を経験しています。剥奪の側面の平均数は5つです。

◾多次元貧困層のうち1.07億人が60歳以上です。 

◾過去20年間、貧困トレンドの研究対象となった75か国の96%に相当する65か国がMPIの削減を達成しています。

◾MPIが絶対値で最速に下落したのは、シエラレオネ、モーリタニア、リベリアであり、そのあとに東チモール、ギニア、ルワンダが続きます。シエラレオネはエボラ感染症(2013-2017)にもかかわらずこれを達成しました。最速で相対的なMPI改善を達成したのは、北マケドニアであり、中国、アルメニア、カザフスタン、インドネシア、トルクメニスタン、モンゴルが続きます。

◾MPIを半減させた国々は4か国あります。インドでは国レベル・子供を対象として達成し、とくに多次元貧困層人口を大きく削減しました(2.7億人)。

◾対象国の3分の1近くで、子供の多次元貧困改善が見られなかった、あるいは大人に比べ子供の改善が遅かったと報告されています。

◾COVID-19前には、現状のトレンドが続けば2015年から2030年の間に貧困半減を達成するとされた国々が47か国でしたが、最貧国では不可能とみなされていました。

◾グローバルMPI指標のうち栄養と学校出席という2指標へのパンデミックの影響をシミュレーションした結果、対応策がなければ今回の危機が過去10年の成果を打ち消しかねないと示唆しています。

◾サブサハラアフリカでは、都市人口の25.2%(9200万人)に対し、農村人口の71.9%(4.66億人)が多次元貧困とされています。

◾サブサハラ・アフリカでは、環境の剥奪が最も顕著です。少なくとも人口の53.9% (5.47億人)が多次元貧困であり、最低1つの環境剥奪を経験しています。環境剥奪はまた、南アジアでも顕著であり、人口の26.8%(4.86億人)が多次元貧困です。

 

 

参考文献

Oxford Poverty & Human Development Initiative. Global Multidimensional Poverty Index  https://ophi.org.uk/multidimensional-poverty-index/

Oxford Poverty & Human Development Initiative. Global MPI 2020 https://ophi.org.uk/global-mpi-2020/

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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