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469. 農村における貧困を多次元で捉える指標

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469. 農村における貧困を多次元で捉える指標

2010年以来、オックスフォード大学と国連開発計画(UNDP)は、グローバル多次元貧困指標(the global Multidimensional Poverty Index: MPI)を提案、保健・教育・生活水準の急激な悪化を捉えることで、従来の貨幣ベースによる貧困指標を補完することを目指してきました。

一方、世界の貧困層は農村地域に集中しており、都市と農村の貧困には共通の指標で捉えきれない質の違いがあります。世界の農村地域は、自然生態系条件のみならず物理的・人為的ランドスケープを形成してきた歴史的背景により各地域が固有の環境を有しています。同時に、農村貧困層の多くは家族経営の自給自足的な農業労働者・零細漁民・牧畜民でありながら、自然資源ベースの生産資源や資産を十分保有せず、社会的・物理的に疎外されてきた人々であることも多々あります。こうした人々は経済ショックだけでなく、気候変動のリスクにもさらされています。

2022年1月、国連食糧農業機関(FAO)とオックスフォード貧困・人間開発イニシアチブ(Oxford Poverty & Human Development Initiative: OPHI)は、共同で「農村多次元貧困指標Rural Multidimensional Poverty Index(R-MPI)」報告書を発表しました。 報告書は、食料安全保障と栄養(food security and nutrition)、教育(education)、生活水準(living standards)、農村生業と資源(rural livelihoods and resources)、リスク (risks)の5つの側面を捉え、農村地域における多次元の貧困を捉える概念フレームワークと指標を開発しました。さらに報告書はこの指標をマラウイ、エチオピア、ニジェール、ナイジェリアからの世帯データ分析に実証的に用い、農村における貧困撲滅に取り組む人々に対する政策的提言を行っています。

報告書は、途上国における貧困測定の方法論研究に言及しながら、地域コンテストごとに意味合いの異なる多元的貧困の指標化の課題についても議論しています。例えば、ある地域において家畜資産を保有しないことは、その社会の事情(漁民コミュニティ)かもしれないし、土地資産を保有しないのは世帯の自主的な選択(非農業活動に従事)の結果かもしれず、必ずしも剥奪状態を意味しません。よって指標化は、地域間比較を可能にする一方、農村各地域コンテクストにおける貧困を捉えるうえでの限界も理解して使用する必要があるようです。

R-MPI指標は、また、普及サービスなどの技術支援へのアクセスの有無を農村生業と資源の要素として取り入れています。リスクについては、金融アクセス、リスク許容度、気候変動リスクにさらされる度合いについて配慮しています。

(参考文献)

FAO and OPHI (2022). Measuring Rural Poverty with a Multidimensional Approach: The Rural Multidimensional Poverty Index. FAO Statistical Development Series, No. 19. Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO) and Oxford Poverty and Human Development Initiative (OPHI). https://www.fao.org/documents/card/en/c/cb8269en 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)