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145. 国連75周年記念のための経済学者ネットワーク:我々の時代を形成するトレンド

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2020年9月、国連は「国連75周年記念のための経済学者ネットワーク:我々の時代を形成するトレンド Report of the UN Economist Network for the UN 75th Anniversary Shaping the Trends of Our Time」を公表し、世界経済・社会・環境への影響が大きい5つのメガトレンド ― 気候変動、人口動態のシフト(とりわけ高齢化)、都市化、デジタル技術の進展、格差の拡大 ― の分析を行いました。2030年に向けて持続可能な開発目標を達成し、次の75年間に包括的・持続的・平等な未来を達成する上で、これらトレンドを方向転換するための努力が求められています。

これら5つのメガトレンドは全て人間の意思決定と政策的選択の結果といえます。このうち三つ -人口動態、都市化、技術革新―、は人類の進歩の表れであり、不可避なトレンドです。他方、気候変動・環境劣化は不可避ではなく、政策の失敗によるものです。不可避かどうかを区別することは今後の政策決定上重要な意味を持ちます。最初の3つのメガトレンドは社会・経済にとり決して悪いことではなく、メリットを最大化し、デメリットを最小化することで乗り切るべきです。他方、気候変動と環境劣化にはメリットは何もなく、逆転させねばならないものです。同様のことは格差についても言え、放置すれば持続的開発を脅かしかねません。最初の3つのメガトレンドは国ごとの政策に依存しますが、気候変動は国際的な協力によってしか解決しえません。格差は国内・国際政策の双方での対応が欠かせず、とくに技術アクセスへの格差はグローバルな協調が必要です。

気候変動と環境劣化の要因は我々の社会と経済に深く根差しています。このメガトレンドを逆転させるには消費嗜好や行動に影響を与えるライフスタイルの意識的な変化、環境に優しい生産過程、資源利用の効率化、企業の社会的責任を含む、需要・供給双方の転換を必要とします。とりわけ、人為的な土地利用の変化の主要因である、食料生産システムを持続的に移行させることが重要になります。生物資源多様性と気候に関する深い理解を通じ、土地生産性と生活水準の維持に貢献することが可能です。洪水の影響緩和のためのマングローブ林の回復や湿地帯保全など、自然資本構築の分野で大きな機会があります。自然資源ベースの解決、土地劣化中立性、サーキュラーエコノミーなど複合的なアプローチがカギとなります。

参考文献

United Nations. Report of the UN Economist Network for the UN 75th Anniversary Shaping the Trends of Our Time SEPTEMBER 2020

https://www.un.org/development/desa/publications/report-of-the-un-econo…

https://www.un.org/development/desa/publications/wp-content/uploads/sites/10/2020/09/20-124-UNEN-75Report-2-1.pdf

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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