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14. 新型コロナウイルス・パンデミック ― 世界銀行速報:サブサハラ・アフリカ25年ぶりの経済不況へ

2020-04-09

2020年4月8日、世界銀行 (World Bank) は、サブサハラ・アフリカ (SSA)地域における新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の経済的影響の分析と政策対応についての報告書を公表しました (Calderon et al. 2020) 。COVID-19パンデミックの嵐が世界中で吹き荒れる中、SSA地域でも感染が次第に急激に広まりつつあります。2020年4月7日時点で、SSA地域48か国中45か国にて5,425人の感染者が報告されていますが、検査体制の不備を考慮すると実際の感染者数はもっと多いのではないかと考えられているようです。以下、報告書要旨から重点ポイントを抜粋します。

SSA地域の経済成長率は、2019年の+2.4%から2020年には-2.1~-5.1%のマイナス成長に転じるとされ、25年ぶりの不況が予測されています。COVID-19パンデミック封じ込めの措置に加え、中国やヨーロッパなど主要貿易パートナー国での生産停止、商品価格の下落、観光業の低迷によるマクロ経済リスクにより、2020年に370憶ドル~790憶ドル相当の生産高の損失が見込まれています。コロナウイルス感染症は、ナイジェリア・南アフリカ・アンゴラという経済大国を筆頭に、とりわけ石油・鉱物輸出依存国に大きな打撃を与えています。2019年12月から2020年3月の間、石油価格は50%、工業用メタル価格は11%下落しました。シミュレーション・モデルによると、COVIDがなかった場合と比較して、成長率は石油輸出国で7%、メタル輸出国で8%以上下落することが予測されました。資源輸出に依存しない国でも経済成長は大幅に減速すると予想されています。楽観・悲観シナリオのいずれにおいても、経済成長率はSSA地域の平均人口増加率2.7%を下回り、多くの人々の生活に影響を及ぼすことが見込まれています。

SSA経済では農業が重要な位置を占めていますが、COVID-19による国境封鎖や輸出規制は、価格上昇や供給不足を通じ、とりわけ農業労働者やインフォーマル部門の非熟練労働者をはじめとする貧困層の生活に打撃を与えます。干ばつ等の気候変動、紛争、バッタ被害などの影響により既に食料安全保障が脅かされている多くの地域において、通貨価値の下落と穀物価格の上昇はさらに状況を悪化させると懸念されています。現在、世界的に穀物備蓄は十分あるとされていますが、通貨価値の下落を経験している国において一部穀物価格は上昇し始めており、消費者価格の高騰(spikes)と食料危機の懸念が高まっています。フードサプライチェーンの規制により、肥料の調達や労働者移動などに支障をきたし始めています。農業生産は、楽観的なシナリオ下で2.6%、貿易規制シナリオの下では7%も縮小すると見込まれています。食料輸入も、取引費用の増加と内需縮小により、大幅に(13%から25%)下落すると予測されています。国際的な協調を通じ、COVID-19に伴うアフリカ食料危機の発生を何としてでも回避しなければなりません。

SSA地域において、COVID-19の経済的影響は以下の複数の経路(チャネル)を通じて広がると考えられます。第一の経路は、貿易・バリューチェーンの分断によるもので、とりわけ商品輸出国(石油・ミネラル・メタル価格の暴落を通じ) と、グローバル・バリューチェーンへ大きく組み込まれている国(エチオピアやケニア) が影響を受けます。第二の経路は、外国投資・援助・海外からの送金・観光収入の下落や、資本逃避(3月に南アフリカが経験した17.5憶ドルのポートフォリオ流出)など、外貨流入の減速によるものです。第三の経路は、COVID-19による感染者・死亡者増加による経済活動への打撃という直接的な影響です。第四の経路は、政府による封じ込め措置と市民の対応による社会活動の分断によるものです。

報告書は、SSA諸国の政治家に対し、人命と生活の保護が優先されるべきとし、保健システム拡充、労働者への所得補償、ビジネスへの資本注入を含む、短期的な緊急援助策と中期的な再建策を講じる必要性を訴えています。同時に、ドナー諸国・機関に対し、SSA諸国の財政難と公的部門の負債を鑑みて、COVID-19対応のための多国籍支援(COVID-19 related multilateral assistance)や債権国による債務返済停止(a debt service stand still with official bilateral creditors)を通じ、SSA諸国への国際的な金融支援を要請しています。

SSA諸国の政府も、今回の経済危機を真剣に捉えており、驚くほどのスピード感で対応しているようです。初期の封じ込めのための都市封鎖を実施すると同時に、ケニアやルワンダ等の国では、大統領・閣僚が率先して自らの給与削減・一部返上を決め、国民に税金の免除等の措置を講じていると報道されています (africanews, PMLdaily, The Star) 。

日本は、アフリカ開発会議(TICAD)を通じ、アフリカを成長著しい21世紀最大のフロンティアとして、官民一体となって開発を力強く支援する立場をとってきました。この経済危機に関しても、国際社会と協調して支援を行っていく必要があります。国際農研は、SSA地域における食料安定生産を旗艦プロジェクトとして国際共同研究を行っていますが、今回の危機に関してもパートナーと密に情報収集につとめ、農業研究を通じた食料危機の解決への貢献を目指しています。

 

参考文献

africanews. African officials donate salaries to COVID-19 fight: Rwanda cabinet joins list. April 7, 2020.  https://www.africanews.com/2020/04/07/african-officials-donate-salaries-to-covid-19-fight-rwanda-cabinet-joins-list/   Accessed on April 9, 2020.

Calderon, C et al. 2020. Africa's Pulse, No. 21, Spring 2020: An Analysis of Issues Shaping Africa’s Economic Future. World Bank, Washington, DC. © World Bank. https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/33541 (なお、内容に関する本翻訳は、World Bankから公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。)

PML daily. COVID-19 CRISIS: Kenyatta announces 100% tax relief for workers, salary cuts for govt officials in Kenya. March 25, 2020. https://www.pmldaily.com/news/2020/03/kenyatta-announces-100-tax-relief-for-workers-salary-cuts-for-govt-officials-in-fight-against-coronavirus.html    Accessed on April 9, 2020.

The Star. Uhuru, Ruto take 80% pay cut in wake of economic crisis caused by Covid-19. March 25, 2020.  https://www.the-star.co.ke/business/kenya/2020-03-25-uhuru-ruto-take-80percent-pay-cut-in-wake-of-economic-crisis-caused-by-covid-19/   Accessed on April 9, 2020.

(文責:研究戦略室 飯山みゆき ・ 農産物安定生産プログラム  中島一雄)

TICAD VI @ Nairobi, Kenya