Pick Up

1489. 早生化による窒素利用効率向上が切り拓く持続的稲作

関連プログラム
情報

 

1489. 早生化による窒素利用効率向上が切り拓く持続的稲作 

 

国際農研は、フィリピン稲研究所との国際共同研究により、早生化によって窒素利用効率と籾収量を高めた新たなイネ系統「NR160E」を開発したことを発表しました(Sasaki et al. 2026, プレスリリース)。これは、高収量インディカ品種「NSIC Rc 160」を基に、出穂期を約8~10日早めても、生産性を維持・向上させることに成功した成果です(写真1)。

アジアモンスーン地域の稲作では、収量増産のため多量の窒素肥料が投入されますが、地下水汚染や温室効果ガスの排出、病害虫の助長といった環境負荷が顕在化するジレンマを抱えており、持続可能な稲作への転換が強く求められています。本成果は、品種改良によってこの難題を解決できることを示すものであり、持続可能な稲作技術への転換に科学的根拠を与える重要な研究成果です。本研究では、日本の中緯度・長日条件下でほ場試験を行い、窒素施肥量を標準の半分に削減した条件でも、NR160Eが原品種を上回る籾収量を示すことを明らかにしました。また、同じ窒素吸収量でより多収となる高い窒素利用効率が確認されており、化学肥料への依存を低減しつつ安定生産を実現する有望な育種素材として期待されています。

本研究を含めた長年の共同研究の成果と貢献に対して、フィリピン稲研究所から国際農研に感謝状が贈られました(写真2)。これは、研究成果がフィリピンをはじめとする稲作現場の課題解決に直結するものとして高く評価されたことを象徴しています。

本研究の一部は、国際農研の公表物であるGreen Asia Report Series No.12の中で紹介されています。本レポートでは、NR160Eの開発に加え、インドネシア向けの窒素利用効率向上イネの開発や実証結果もまとめられており、技術普及に向けた展望を知ることが出来ます。

 

(参考文献)
Sasaki, K., Saito, H., Mananghaya, T. E., Niones, J. M., & Obara, M. (2026). Development and Evaluation of an Early Heading Rice Line from the Indica High‐Yielding Variety NSIC Rc 160. Plant Direct, 10(3), e70160.

 

(文責:生物資源・利用領域 小原実広、佐々木和浩、熱帯・島嶼研究拠点 齊藤大樹)


 

写真1. NR160Eの栽培の様子

写真2. 感謝状を受け取る小山前理事長

関連するページ