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1429. 地球の限界内で健康的な食生活を送るには

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1429. 地球の限界内で健康的な食生活を送るには

 

「プラネタリー・バウンダリー」概念の提唱者として知られるヨハン・ロックストローム博士は、Nature誌の論説にて、持続可能な地球にとり、大胆な政策に支えられた食生活の変革が不可欠であると述べました。

「プラネタリー・バウンダリー」フレームワークは、地球の不安定化を避けるために遵守すべき9つの生物物理学的閾値を特定しています。ロックストローム博士は、地球規模の視点から見て、私たちが何を食べるかは、単なるライフスタイルの選択ではなく、人類と地球の健康を左右するシステム全体の課題であると強調します。

現在、食料の生産と消費は世界の温室効果ガス排出量の約30%を占め、世界の年間淡水使用量の約70%は農業に使用されています。農業はまた、栄養素汚染と生物多様性の喪失の主要な要因でもあります。

現在の食生活は人間の健康を損ないます。毎年、約1,500万人の成人が不健康な食生活のために早死にしています。この死者数は、世界中の大気汚染による年間死亡者数を上回っています。現在、世界の人口のわずか1%だけが、地球の限界内で人々の権利と食料ニーズが満たされた「安全で公正な空間」にいます。

昨年10月、ロックストローム博士も関わった2025年EAT-ランセット委員会は、改訂版プラネタリー・ヘルス・ダイエット(PHD)を提案しました。この食事は、果物、野菜、ナッツ、豆類、全粒穀物を豊富に含み、赤身の肉を週に約1サービング、鶏肉と魚介類を適度に2サービング摂取することを推奨しています。PHDは非常に柔軟性が高く、地中海、南アジア、東アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの多くの伝統料理は、すでにその原則に沿っています。この健康的で植物性食品を豊富に含む食生活は、心臓病、糖尿病、そして一部のがんなどの病気の予防に役立ちます。PHDは必須栄養素をすべて含み、1日のエネルギーの約14%をタンパク質から得ています。

しかし、現在、ほとんどの人々の食生活はPHDから大きく逸脱しています。多くの国では、動物性食品を過剰に摂取し、野菜、果物、豆類、ナッツ類を十分に摂取していません。さらに、超加工食品に大きく依存する食生活は、世界中の文化にますます根付いています。

EAT-ランセット委員会は、2050年までに約100億人の人口を地球の限界内で養うことができるかどうかを検証しました。結果は厳しいものです。健康的な食生活、食品廃棄物の削減、そして土壌の肥沃度を維持し炭素を吸収するための保全耕起などの持続可能な生産手法の採用により、2050年までに世界の温室効果ガス排出量を20%削減できる可能性があります。しかし、食生活が変わらなければ、排出量は33%増加するでしょう。

ロックストローム博士は、植物性農業への補助金やインセンティブ、排出量の多い食肉生産への課税または上限設定、多様な作物のサプライチェーンへの投資、健康的で持続可能な食品を優先する公共調達基準など、様々な政策の必要性を訴えました。この変革には多額の費用がかかり、年間最大5,000億米ドルの投資が必要となると推定されています。しかし、その純利益(約5兆ドルから10兆ドル)は、これらのコストをはるかに上回り、より健康的な食生活、気候変動による被害の軽減、環境悪化の抑制によって医療費が削減されることが期待されます。

ロックストローム博士は、地球温暖化を産業革命以前の水準から1.5℃に抑えるためのあらゆる確実な道筋は、農業を主要な温室効果ガス排出源から純吸収源へと転換する食料システムの変革を前提としているとし、科学と正義に根ざしたグリーンフード革命(a green food revolution)の必要性を訴えました。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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