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1374.沖縄の異常な高温と極端な降雨(寳川通信9)
1374.沖縄の異常な高温と極端な降雨(寳川通信9)
今年の沖縄では、高温や干ばつ等の異常気象が目立ちます。9月の平均気温は、那覇では平年と比較して+1.8℃で29.7℃(観測史上1位)、石垣では+1.6℃で29.8℃(観測史上2位)でした。10月も中旬までは高温で夜温が26℃を下回ることがありませんでした。その後、月末まで長雨の様相です。今年は晴れが多く台風の接近が少なかったため、海水温が低下しなかったことが異常かつ長い高温の要因の一つと考えられます。高温と極端な降雨の関係について、沖縄気象台の説明がわかりやすかったので紹介します。水蒸気は空気に含まれる水の量で、これが閾値(飽和水蒸気量)を超えると、空気が水を含めずに雨が降ることになります。この空気が水を含むことのできる量を、“ししおどし”で置き換えて想像してみてください。日本庭園で風流な“ししおどし”は、竹筒に水が流れ、その量が多くなると傾いて水がこぼれ、竹筒が戻る際に石などに当たって音を奏でます。高温ではししおどしの容量が多くなるので、水がこぼれるまでの時間が長くなり(すなわち、気象で考えると干ばつになり)、こぼれるときにはドバっとこぼれる(すなわち、豪雨になる)、といった具合です。
沖縄のサトウキビ生産は、春に植える春植え、夏に植える夏植え、冬場の収穫後のひこばえを活用した株出し栽培が行われます。今年は2-3月の気温が低く生育停滞し梅雨前までに根や分げつの成長を確保できなかったこと、梅雨が短く雨量も少なかったことに加え、通常以上に長い7月以降の干ばつ傾向により、灌水が制限される地域で特に大規模な干ばつ害を生じています。10月中旬よりようやく雨が降り出しましたが、豪雨と長雨の傾向が続いており、洪水や倒伏を引き起こしており、まさにマルチストレス状態です。11月以降は晴れても徐々に気温が低くなり、光合成は低下し糖蓄積を始めるため、今後の成長は多くは見込めなそうです。また、台風の少ない年は10月以降に大きな台風が来る可能性も高く、大きくなったサトウキビは折れたり倒れたりしやすく、葉も裂傷すると糖度低下の要因になります。高温が好きなサトウキビの場合は高温による害よりも極端な降雨による害が大きそうです。熱帯果樹のマンゴーは、日本では温室で栽培されるため、野外よりも高温多湿条件に曝されます。特に夜温が高いと、枝葉の成長が止まらず休眠してくれないので冬場の花芽形成に支障をきたします。これらのように、少しの気温の上昇で、その時の成長や次期の生産等にも大きな影響を及ぼします。
(文責:熱帯・島嶼研究拠点 寳川拓生)