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1237. 気候変動インパクトの社会的側面

1237. 気候変動インパクトの社会的側面
最も貧困で脆弱な人々は、気候変動の原因にもっとも関与していないにもかかわらず、異常気象の影響を最も強く受ける傾向があります。気候変動の影響が増大するにつれ、何百万人もの脆弱な人々が、失業、健康への影響、食料・水アクセス不安、移住と強制的な避難、住居・地域社会とのつながりの喪失、その他関連するリスクにおいて、不均衡な課題に直面しています。気候変動と世界的な不平等のパターンの関係について論じた、世界銀行の考察を紹介します。
気候変動への脆弱度は、社会的グループによって異なります。例えば、農業、漁業、観光業といった分野の労働者は、その生業を自然資源に依存しており、ますます予測不可能になる気象や季節パターンに晒されるようになっています。女性が世帯主の世帯、子ども、障害者、先住民族や少数民族、土地を持たない小作人、移民労働者、避難民、高齢者、その他の社会的に疎外された人々は、平穏な生活を脅かす可能性のあるショックに対処し、そこから立ち直るための経済的資源に恵まれていません。彼らの脆弱性の根本的な原因は、地理的な立地、経済的、社会経済的、文化的、社会的地位、そして資源、サービス、意思決定権へのアクセスといった要素が組み合わさって生じています。
貧困層は、気候変動に対して最も脆弱な立場にあるだけでなく、不均衡な影響を受けることも少なくありません。こうした影響には、生活費の上昇、生計手段の喪失、資源や支援システムへのアクセスの制限などがあり、既存の不平等や貧困傾向を悪化させます。市民の目線に立った適切な支援がなければ、気候変動対策は、貧困世帯への経済的負担の増大など、特定のグループの生活に意図しない結果をもたらす可能性があります。例えば、公共交通機関の拡充や炭素価格設定といった政策は、公共交通機関の運賃上昇につながり、貧困世帯に不均衡な影響を与える可能性があります。同様に、受益者や影響を受けるコミュニティとの連携の元策定されなければ、林業活動の時期を制限するといったアプローチは、年間を通して森林に依存して生計を立てている先住民コミュニティに悪影響を及ぼす可能性があります。脱炭素経済の分配的影響への対処に加え、社会的側面、文化的側面、政治経済的側面を理解し、対処する必要もあります。
低炭素で気候変動に強い開発への移行を支援するために必要な科学と政策策定分野では、近年、大きな進歩が実現されてきました。そのカギは、透明性と情報へのアクセス保証を通じ、気候リスクとグリーン成長に関する議論に市民の参加を促すことです。気候変動の影響を軽減し、脱炭素化を阻む行動面・政治的障壁を克服するための支援や国民の要求を結集し、解決策に関する新たなアイデアや主体性を生み出すことが不可欠です。
さらに、地域社会は、単なる受益者としてではなく、レジリエンス構築のパートナーとして関与すべきです。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最近の報告書は、気候変動に対するレジリエンスの構築において、科学的知識、先住民族の知識、地域に根ざした知識といった多様な形態の知識の価値を認識しています。地域社会や社会的弱者グループを、地域に即した効果的な開発効果の実現に必要な政策、技術、財政支援へと結びつけることを可能にするイノベーションが必要とされています。
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)