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1033. 気候変動の熱波とモンスーンへのインパクト

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1033. 気候変動の熱波とモンスーンへのインパクト

 

インドにおいて、記録的な熱波が報告されました。インドでは通常4-5月のこの期間は暑いものの、3年連続で長期にわたる熱波が観測されるのは稀とのことです。5月29日のNature誌の論説は、人為的活動を原因とする気候変動が、このような極端な気象の頻度・強度を高め、長引かせている可能性を指摘します。

インドではこのあと雨季に相当するモンスーンの季節がやってきますが、5月28日Nature誌論説は、気候変動はインドにおいてモンスーンのパターン変化ももたらしており、かつその影響は地域ごとに異なり、ローカルな適応策の必要性を述べています。   

もとはアラビア語で「季節風(季節による風向きの変化)」を意味するモンスーンは、人々の生活および経済にとって極めて重要です。通常、6月から9月にかけて、南西からの湿度を含む季節風によりインド亜大陸では降雨量が増える傾向にあり、逆に10月から12月は北東からの降雨がインド南部に雨をもたらします。

近年、インドではその降雨パターンに大きな変動がみられるようになり、農業や水管理セクターが多大な影響を受けています。歴史的に乾燥地域であるラジャスタン、グジャラート、マハラシュトラでは、過去10年間、その前の30年間に比べ、南西モンスーンによる降雨が10-30%増加しています。対照的に、インド自治体の11%近くにおいて、南西モンスーン期の降雨が10%以上減少していますが、農業的に重要なヒンドゥスターン平野・脆弱なヒマラヤ地域(多くの固有作物種の原産地)、世界で最も降雨量の高い東北地方、に相当します。

論説は、モンスーン降雨のパターン変化に備え、気象モニタリング体制の補強、インド経済・雇用にとっても重要な農業部門の適応能力強化、より精密なデータ分析、の必要性を掲げました。降雨量に関しては、しばし総年間降雨量よりも、季節間分布の変動についての予測が重要となり、精密な粒度でのリスク管理・インパクト評価を行うためのデータ分析が必要となります。さらに、適応策に向けて、比較的短期的なスパンでの予測の重要性も高まります。

論説は、同じ自治体内で洪水・干ばつが季節内に起こる可能性も考慮し、ローカルレベルでの微気象データ収集強化の必要性を訴えました。論説はまた、インドにおける不規則なモンスーンのもたらす課題解決が、アフガニスタン・ケニア・ブラジル・インドネシアをはじめとする極端な降雨と洪水に直面するグローバルサウスの国々への教訓を提供しうる可能性に言及しました。

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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