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1084. 生物多様性および気候変動に同時に取り組む必要性

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1084. 生物多様性および気候変動に同時に取り組む必要性

 

以前ブログで紹介したように、今日、世界は気候変動・生物多様性喪失・感染症発生の3つの危機に直面しています。 気候は過去12万5000年で最も温暖化し、異常気象の頻度は増え、世界平均気温はすでに1850-1900年の平均値の1℃を超え、近い将来1.5-2℃に達しかねません。自然生息地は次第に分断され、手つかずの自然はどんどん縮小しています。気候と自然生息地の変化は、種の分布のシフトをもたらし、生態学的コミュニティの構成を変えることで、100万種が絶滅のリスクに直面しています。同時に、野生動物・家畜・植物・ヒトの間で感染症の発生と蔓延の頻度が増しています。こうした環境変化の背景に、環境汚染、森林破壊、農地拡大、といった人為的要因が指摘されています。気候変動・生物多様性喪失・感染症発生の関係は、時にお互い牽制し、時に補強しあい、フィードバックループを通じて連鎖的な影響をもたらしているのです。

 

今年後半には、世界のリーダー達が、気候変動と生物多様性の損失に取り組むため、2つの別々の国際会議に招集されます。2024年10月21日から11月1日まで、生物多様性条約(CBD)締約国会議(COP16)がコロンビアのカリでCOP16に開催され、その後の11月11~22日には、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)締約国会議(COP29)がアゼルバイジャンのバクーで開催されます。

Journal of Applied Ecology誌に掲載された論文は、生物多様性および気候変動に同時に取り組む必要性を訴えました。

地球規模の気候危機と生物多様性危機は密接に絡み合っていますが、現在、両者に共同で取り組む政策手段はありません。生物多様性と気候変動の関連性全体で目標を調整する調整された首尾一貫した政策枠組みを設計するための国際的なプラットフォームがないため、これは問題です。

論文は、パリ協定と昆明・モントリオール世界生物多様性枠組み(GBF)の両方を成功裏に実施するためには、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)と生物多様性条約(CBD)との間の共同作業プログラムが必要であると強調しました。このような共同作業プログラムは、現在のグローバルガバナンスの空白を埋め、重大な実施ギャップに対処すると同時に、気候と生物多様性の行動におけるイノベーションと相乗効果を促進することが期待されます。

 

(参考文献)
Idil Boran, Nathalie Pettorelli. The Kunming–Montreal Global Biodiversity Framework and the Paris Agreement need a joint work programme for climate, nature and people. Journal of Applied Research. First published: 22 July 2024 https://doi.org/10.1111/1365-2664.14721

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

 

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